根の治療後の不具合の大部分は細菌によるものです。
日本国内で年間約1300万本の歯に根管治療が施されています。
保険根管治療の成功率はおおよそ40%弱なので780万本の根管治療後の歯に不具合が見られることになります。
その中には無症状のものもあれば骨吸収と強い痛みを伴うものも多いのでしょう

今年のブログは2つのテーマについてよりハッキリと書いていきます。
1つ目は保険治療と自由診療の違い。
2つ目は顕微鏡治療には見える顕微鏡治療と見えない顕微鏡治療があること
です。

患者さんは40代女性。
左下第一大臼歯に強い痛みがあり咬合痛もある。
1年ほど前に保険治療で抜髄処置を受けたとのこと。

当院の顕微鏡治療をご希望の患者さんでした。
顕微鏡治療は自由診療で根管治療費は約20万円です。

患者さんは今回の歯の痛みを経験してご自身で勉強したそうです。

歯科医院選びの目安としてラバーダムと顕微鏡を使用している歯科医院を探したとのことでした。

ラバーダムは根管治療を成功させるための必須なものだと思います。
が、ラバーダムをすれば根尖病変が治癒するかと言えばそうではありません。
そこは歯科医師の知識と技術によります。

日本の歯医者で根管治療時にラバーダムをする一般歯医者は5.4%、日本歯内療法学会会員で25.4%だそうです。

これは保険治療、自由診療が混合された集計なので保険根管治療であればもっと少ないことが予想されます。

最近では保険治療でも顕微鏡を使いますという歯医者もありますし、顕微鏡治療は自由診療で行いますという歯医者もあります。
保険治療では顕微鏡を使用しても使用しなくてもどちらでも良いようです。

顕微鏡は小さなものを拡大するだけの機器です。
口腔内の多くの部分は死角で見えません。

当院の顕微鏡治療は死角をミラーで映し出し、映し出された歯を顕微鏡で拡大して、見ながら治療を行います。

これをミラーテクニックと言います。

当院の顕微鏡治療はミラーテクニックを主体とした顕微鏡治療が特徴であり、他の顕微鏡を使う歯医者との大きな違いです。

見える顕微鏡治療と見えない顕微鏡治療の違いです。

顕微鏡の普及率は大体5%程度。

根管治療において保険ではラバーダムと顕微鏡を使用すること自体が稀有なことだと言えます。
私は根管治療を成功に導くにはラバーダムと顕微鏡は必要条件になりますので、保険治療と自由診療の根管治療の違いは何が違うのか、という質問に対しての回答になりますか?
他にも違いはありますのでブログ歯記全体をお読みください。
保険と自由診療の違いを一言で短時間に明瞭な説明をすることは私にはできません。
限られた診療時間で説明するには無理がありますので、保険と自由診療の違いを知りたい患者さんは当院のブログを読んだ上でわからない事を聞いてもらえると大変助かります。

当院の保険根管治療は日本の90数%の歯医者となんら変わらない治療法です。

患歯にはクラウンが装着されていますのでこれを除去します。

ラバーダムをすることで切削金属粉を飲み込まないですみます。

銀歯を外した後はメタルコアを外します。

メタルコアを除去する方法は様々な方法があります。
1短時間で除去するために歯質を削除する方法。
2この歯の未来のことを考え金属だけを削って除去する方法。
3上記の方法の中間の方法、歯質も削るがある程度メタルが露出したらドライバーでこじって除去する方法。

これらの中で一番歯に優しいメタルコアの除去方法は2のメタルだけを削り取る方法です。
これなら歯質を除去しないのでフェルールを最大限温存できるし、ドライバーでこじらないので歯の破折の心配がありません。

顕微鏡で見ながら治療できる特徴の一つです。

ミラーテクニックの中でも下顎の治療は難しい部類に入ります。

メタルを深部まで見ながら削るということは、ミラーテクニック以外今のところ存在しません。
歯科の顕微鏡治療では。

いわゆる直視と呼ばれているミラーテクニックを重要視しない歯医者の顕微鏡治療はどのようになるのでしょうか。

1と3の除去法になるのが一般的でしょう。

患者さん自身がどんな除去法をされているなんてわかりますか?
こんな事を書く顕微鏡歯科医師はごく少数なのでしょう。

見えてない顕微鏡治療を顕微鏡治療と謳っている歯医者の数の多さに気が滅入るほどです。

こんな小さな事気にし過ぎと思われる人もいるかもしれませんが一事が万事。

メタルコアが装着されている歯の根管再治療に対してフェルールがあるかどうかは大きな問題であるが、短期的にはほぼ問題が生じない事が見えない顕微鏡治療をしている歯医者を助けてしまいます。

根管治療の成否はコロナルリーケージも大きな要因になるからです。

メタルだけを分割して除去していけば歯に無理な力をかけずにすみます。

下顎のミラーテクニックを臨床で使えるくらいにするには相当の練習が必要になります。
技術を磨くために鍛錬することは技術職としては当たり前の事だと考えています。

根管充填材を除去しながらストレートラインアクセスを形成し、根管治療を進めて行きます。

下顎第一大臼歯には近心根と遠心根があります。
近心根は手前にある歯根ですが、いわゆる直視では根管口はなかなか見えないだろうと思います。
現在他の患者さんで上顎の大臼歯なのですが、陳旧性のパーフォレーション部の具合が芳しくないので思案中なのですが、顕微鏡を使えど死角部分を盲目的に削るとパーフォレーションの危険性があります。

初回の根管治療を世界基準で治療できれば成功率は90数パーセントと言われています。
再治療の場合は根尖病変の有無や痛みの有無により成功率が異なりますが、今回の症例のように根尖病変と痛みがある場合の成功率は6割台とも言われています。

ガッタパーチャは多孔質なので感染物質がたくさんついていると考えられるので、全てを取りきりたいところです。

根尖方向のガッタパーチャは完全にいわゆる直視では見えません。
ミラーテクニックでないと見ることはできません。
見ることならほぼ誰でもできます。
見ながら除去する事が完全に取りきることの条件だと思います。

いざという時顕微鏡を使います。
いざという時はミラーテクニックで治療します。

このように話す歯医者に何人も会いました。

普段から使わずしていざという時になんか絶対に使えません。

ミラーテクニックができない顕微鏡を使っている歯医者はどのようにガッタパーチャを除去しているのだろうか。
少しだけ興味があります。

手探りで取って確認、手探りで取って確認を繰り返せばきちんと除去できるのだろうか。

深部のガッタパーチャを除去するとかなりの汚染が確認できました。

根管治療専門医でミラーテクニックの大切さを主張している歯科医師は私が知る限り極少数しかいません。
どうやって治療しているのだろう?

普通にミラーテクニックができているから、それが当たり前だと考えているから何も言わないのかな?
それとも根管治療はそこまで見ながら治療しなくても治るものなのだろうか。
まあ、治せているから専門医なんでしょうけど。
ただ、専門医は根管治療だけの歯のお付き合いですが、私達のような一般歯科医師は長いお付き合いになると、やはりフェルールだとか、接着だとか、補綴など、精密な治療が必要となります。

根管治療専門医と私を比較するのもおこがましいが、コンベンショナルな治療で治癒しなくて外科処置へ移行した数は今まで3症例あります。

専門医に比べれば分母が少ないので決して少ないとは言えませんが、それでも1%もないと思います。
もちろん私に愛想尽かして転医した患者さんもいるかも知れませんし、病変はあっても無症状で気づかないだけなのもあるかも知れません。
そもそも経過観察で追跡調査はできていませんし。

それでも専門医みたいにシビアなケースがないだけかも知れませんが、外科処置が少ないと感じるのはやはり見ながら治療できているからだと思います。

3症例のうちここ数年久しぶりに外科処置をしたのが、逆根管充填にアマルガムが使用されそれを除去するために最初から外科処置を予定していた1症例も含めてです。

根管内のレッジやフィンなどに対する処置を、ミラーテクニックを使えない歯医者はどうしているのだろう。

破折器具もどうやって除去するのだろう。
ある世界有数の日本人の根管治療の専門医の治療動画をみると、ミラーテクニックで施術しています。
本当にできる顕微鏡歯科医師は見ながら治療することの重要性を知っているので、セミナーでも発表でも普通にミラーテクニックで治療している動画のスライドを見せてくれます。
それこそ流石!と思わせる一流の腕前です。

重要さがわかっていてもミラーテクニックができない人の発表のスライドは何だかお茶を濁しているように見える。

ミラーテクニックなんて必要ねえ、今まで通りの見えない治療でも何ら問題ないぞ!と考えている顕微鏡を使っている先生の発表やセミナーのスライドはある意味清々しい。

最近このような苦言めいた事をブログで書き始めているのは、このまま放っておいたら見えない顕微鏡治療が顕微鏡治療だという認識を患者さんでなく、同業者の歯医者に認識されそうな勢いを感じるからなのです。

もうね、鬱憤が溜まってますよ。

本来直視という言葉もミラーを使わず盲目的な治療をするための言葉ではありません。

今一度見えるという事は何なのかを顕微鏡を使っている歯医者に問いかけたい。

直視がどうのこうのとか、ミラーテクニックがどうのこうのとか、もうそんなくだらない事をいつまでも議論するのではなく、顕微鏡は今まで見えなかったものを見るために使うんだ、そして治療の確実性を高めたいんだ、という事が全員の共通項なのだから我々がやるべき事はもうわかっているはずです。

そして現在より、より高いレベルで次世代の治療について一緒に考えられるようにしたい。

日本顕微鏡歯科学会をそのような学会にしていきたい。

まー、部外者なんですけどね。
余計なお世話と言われそうです。

さて、左下6の根管治療はMTAで根管充填しました。

CT像
上段:術前
下段:術後12ヶ月

coronal

sagittal

axial

私の好きな故野村監督の言葉に
「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」
という言葉があります。

盲目的顕微鏡治療でもうまくいくときは当然あります。
しかし治療の失敗には必ず原因があり、その原因を私達歯科医師が見落としている場合も多いのではないかと思います。

謙虚な姿勢で歯科治療に取り組もうと考えれば、私は顕微鏡にミラーテクニックを組み合わせた見える顕微鏡治療に辿り着くと考えていますが、世の中多様性というのでしょうか、いろいろな考えがあるのですね。