歯に対する価値観は人によって様々。
おもて歯科医院では、費用は高いけれども他院では真似できないような治療を受けることが可能ですし、日本のどこにでもあるようなあなたの近所の歯医者さんと同じような内容の保険治療も行っています。

今回は以前このブログでも紹介した抜歯を宣告された歯の治療の経過について。
抜歯と言われて

患者さんは残せる可能性があるのなら、顕微鏡治療を受けてみたいとのこと。

根管治療とクラウンの治療で約50万円。
根管治療7回 クラウン5回

最近なかなか興味深い本を読みました。
歯科経営の本で年商1億円を目指すという本なのですが、年商1億円だと歯医者さんの所得は約2千万円ほどになるそうです。
歯科医師になるための時間とお金の投資、医療訴訟などのリスク、経営者でもあり医療人でもあるという仕事の大変さから、年商1億円目指して2千万円の所得があったってバチは当たらないでしょ、そのためには何が必要なのかを教えますという本です。

自分の技術に対して対価をいただく。
歯科医師として世界的に妥当と考えられている治療を行って、その対価として見合った治療費をいただくことにいささかも後ろめたさを持っていません。

この本には年商1億円以上を達成した歯医者の経験談が記載されていますが、私と全く異なる考えの歯医者さんがいました。
だから私は年商1億円を遥かに達成できないくすぶった歯科医師なのでしょう笑

その歯医者さんは、開業当初は自由診療を中心に歯科治療を行っていましたが、鳴かず飛ばずで経営不振に陥ったそうです。
多分歯科治療に色々理想があり志を持っていたのでしょうね。

背に腹は変えられません。
治療の方針を保険治療主体にして、魅力あるキャッチコピーで広告をたくさん打ち出し、いまでは歯科医院の増築をするまでに人気のある歯医者になったそうです。
とても儲かっているそうです。これは本人が言っているんですよ。

そんな彼の文章にこんな言葉がありました。
「自由診療で保険治療の5倍、10倍費用がかかったって5倍10倍長持ちするわけではないんですよ、と患者さんに説明しています」。
ほう、私が考える自由診療とは随分異なります。
なんか、新しい発見をしたような気持ちです。

今回の患者さんは保険治療の根管治療で抜歯のキワまで追い込まれました。

5倍、10倍もつなどの話ではなく抜くか抜かずに済むかの話です。

術後1年4ヶ月

虫歯治療も同じです。
神経を取るのか取らずに済むのか。
隣在歯の誤切削をされるのかされないのか。
後戻りができない硬組織の切削を保険の治療で済ますのか、見ながら治療する顕微鏡治療にするのか。

どうして保険の治療ではできないのですか?
に対しての回答は、費用が安すぎて医院の経営ができなくなるから、です。
自由診療で費やす治療時間、材料、技工料、人件費、技術・知識研鑽費を考えたら保険治療では完全に赤字です。

歯に対しての価値観に良い悪いはありません。

保険治療の現実に鑑みれば、私が考える良い治療、家族に対して行う治療は保険治療の費用では到底できない内容です。

費用を安くするのに重きを置くなら保険治療をおすすめします。
費用が高くても最善の治療をご希望なら自由診療をおすすめします。
本当にこれだけです。

日本国が決めた保険治療の内容と費用を希望されて来院しているのに、なんで保険ではできないのですか?と言われてもとても困ります。
それができないから自由診療で行っていることをご理解ください。

さて今回の患者さんには術前に、全力で治療に当たりますが成功率は100%ではないこと、残念な結果になってしまい抜歯になる可能性もあることは事あるごとに説明をして治療に臨みました。

患者さんは浦安市外からの通院でしたが、遅刻・キャンセルのない方でとても助かりました。

歯科治療には科学的根拠に基づいて治療すること、いわゆるエビデンスのある治療をすることが好ましいと思います。
エビデンスとは臨床研究による実証のことであり、患者さんの予後改善のために創られた研究です。

が、歯科治療のほとんどは薬を飲んで治療するわけではなく、歯科医師が手を使って治療します。
だからエビデンスも大事だけど歯科医師の技量も大事なので、エビデンスは治療マニュアルではない事を念頭に置いておかなくてはいけないと思います。
原著論文の研究の仕方によっては異なる結果になることだって多々あるわけだし、実験方法なんて実際書かれてない部分は全くわからないですし。
かといってエビデンスを軽視しても良いとは言ってないんですよ。

むしろ忘れてはいけないのはエビデンス云々の前に自明の理というものがあるのではないでしょうか。

それはミラーテクニックを主体とした見ながら治療することです。

あまりにも見ながら治療することが軽視されがちであると感じています。

根管治療でいえば、感染源の除去が重要。
このことについては異論がないと思われます。

ではこの感染源をどうやってとるのか?

手探りでやるのかミラーテクニックで見ながら取れるのかどちらが確実性が高いのでしょうか。

もちろんいくらミラーテクニックでも湾曲したその先の根管は見えませんし、根尖孔外のバイオフィルムだって取れません。
根尖孔外に至っては歯内療法の範疇ではなく外科的歯内療法になるわけですが。

臨床とは不確かな要素がたくさんあり、患者さんごとに異なることは当たり前のことです。
だから治療に当たるときに心がけている事は
①私(術者)の経験 
②理論
③エビデンス
④患者の意向・価値観
をバランス良く統合することであり、これがEBM(Evidence Based Medicine)です。
(臨床統計学からEBMの真実を読む 能登洋著より)

EBM実践に必要な要素は
①問診、診察の臨床的技能、コミュニケーション能力
②自分の能力・知識の限界への謙虚な認識
③自主的で継続的な生涯学習
④向上心および努力することへの熱意
(Lancet 2003より)

一本の原著論文でエビデンスがどうのこうのと論じることに意味があるとは感じていません。

今回の治療に関しては今のところ経過が良く患者さんは喜んでいます。
予後についてはまだわかりませんが、患者さんの抜歯を少しでも先送りにしたいという希望にはなんとか応えられたと思います。

おもて歯科医院では上記のように保険治療と自由診療を行っていますが、自由診療をご希望の患者さんは初診から自費になります。

これは保険の制度上そのようなルールであることと、EBMを実践するための自由診療に必要な問診、診査、説明などにどうしても時間が必要だからです。

こうして抜歯の危機にさらされた歯を救うことができました。

救歯に一笑を得る治療ができてとてもよかったです。

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔