おもて歯科医院がどうして顕微鏡(マイクロスコープ)歯科治療に特化した歯科医院にしようとしたのか。
その道のりをご紹介します。

2012年1月31日の投稿を加筆修正

ネットでたまたま目にした歯科に関する相談に回答しました。

<相談者>
○○駅付近で、評判の良い歯科があったら教えてください。
今まで通っていた歯科は、土日でも通えるメリットがありましたが、
流れ作業的で人的に任せられない医者だったため、
技術と
人の気持ちを察する事が出来て信頼できる医者がいる事を望みます。
補足
つまり、テクニカルスキルは当然ですが、
ヒューマンスキルもないと、一生使う大事な歯を任せるには、
乱立している歯科の選択が今後を左右するからです。
引越しや職場で仕方なく歯科を転々しましたが、
ひどい所は本当にテクニカルスキルがないので、
仕方なくインプラントにせざるを得なくなりました。


<私の回答>
歯科医の立場から自分の経験を通して参考になる部分があれば幸いです。
かつて保険診療主体でとっても人気のある歯科医院に勤務していました。
外観はきれいでスタッフの雰囲気も良いところでした。
1時間に歯科医1人で6〜8人の患者を診察していました。
このアポイントの取り方は、キャンセルをみこして多めの予約をとっていました。ですから患者さんが時間通りに来院したらもうたいへん。いつも1時間以上お待たせしていました。予約制にもかかわらず。
当然治療にかけられる時間も少なく衛生面もおろそかになりがちでした。
でも人気があって、いつも予約はいっぱいでした。
私は疑問をもちながら保険診療はこういうものなのかと納得しようと努力しましたが、歯科医療自体に魅力を感じなくなったこともありました。
この時本気で歯科医をやめて他の職業を探そうと考えてました。
この歯科医院だけでなく他に勤務した数件の歯科医院も同じようなものでした。
人気が出る要因はきれいな外観とスタッフの愛想の良さ、雰囲気で決まるのかなと思いました。

もし自分の歯、家族の歯を治療するとき何がいいのかという観点から自分なりに沢山勉強しました。
その結果顕微鏡治療(実体顕微鏡。細菌を見るものではありません)に至りました。詳細は省きますが、私個人の意見としては従来とは次元が違うと考えています。文献的にはどちらのやり方が長期的にもつのかはっきりした結論は出ておりませんし、歯科医の間でもさまざまな意見や考えがあるのが現状です。しかしどう考えても手探りでやるより断然いいと考えています。

顕微鏡治療は治療時間が長くなるので私個人は自由診療でのみ治療を行い、保険では従来の進め方で行っています。
顕微鏡治療は保険がきかないということではありません。実際保険治療で顕微鏡を使用しますという歯科医院のホームページを見たことがあります。
私の現在の考えでは、きちんとした治療にはコストが必ずかかります。
特に時間というコストが一番かかります。
私がかつて勤務した歯科医院は私一人で1日40人くらいみましたが、顕微鏡治療では多くても一日6、7人くらいなのではないでしょうか。

相談者さんは歯科医のスキルの面に注目されていますが、まったくその通りです。

人間的に信頼できる歯科医であることはもちろんですが、やはりスキルは大事です。
ただ私が知る限り、スキルのある先生がきちんとした治療をするとほとんど自由診療になります。
ここで注意ですが、顕微鏡をもっている歯科医が全員スキルの高い歯科医ではないということ(広告に使っている歯科医院も多いと聞いています)。
顕微鏡はただの道具です。
良い道具を使えさえすれば誰でも名医になれるわけではありません。

今歯科医院は飽和状態で経営的にも厳しい状況です。
本当に大事な部分が抜け落ちているのに、人気が出るよう腐心しているところもあるかと思います。
患者に迎合するあまり、不都合な真実にはふれていないようなところも見受けられます。

色々な意見を聞いて最後はご自身で決断しなければいけませんね。

〜人は人生の中で会うべき人には必ず会う。一瞬早すぎもせず、遅すぎもせず。しかし、内に求める心なくば、眼前にその人ありといえども縁は生じず。 〜  森信三
よい歯科医師に巡り会えるようお祈り申し上げます。』

以上のように自分の経験から自分や家族に行う歯科治療はどのような治療なのか、という視点で回答しました。

患者さんから見た良い歯医者と我々から見た良い歯科医師には大きな隔たりがあります。

治療を安心して任せられる歯科医師をどうやって選べば良いのでしょうか。

今までは近所の歯医者さんしか見つけることはできませんでしたが、ネットによって全国の歯医者さんを知ることができるようになりました。

多くの歯科医院にはホームページがあるので、検索単語を入力すればたくさんの歯科医院がヒットします。
しかしその中から選ぶのが一苦労。

もし顕微鏡歯科治療をご希望なら、その先生が治療動画を公開しているのも選ぶ基準の一つだと思います。

その動画の良し悪しは、定点カメラになっていないことと死角になっていないことです。

顕微鏡治療で一番大事なことは「見ながら治療する」ことです。

この当たり前のようなことが今まではできなかったのです。

口の中には死角がありますので、そこを鏡を使って治療するのが歯科独特の顕微鏡治療なのです。

その見分け方は、例えば歯を削っている治療であれば歯を削っているところがちゃんと動画で見れるか、です。

何かやってるみたいだけど見えてないよ、という素直な感覚を大事にしてください。

ここをしっかり押さえている歯科医師は本物の顕微鏡歯科医師だと思います。

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔