根管治療(根の治療)で苦労されている患者さんは多いと思います。
神経を取った歯を長持ちさせるにはどうすれば良いのでしょうか。
日本歯内療法学会をレポートします。

2012年6月24日の投稿を加筆修正

東京にて歯内療法学会が開催されました。

テーマは『歯内療法の未来を考える』

歯内療法とは簡単に言えば根の治療、神経をとる治療のことです。
根管治療ともいいます。
「根幹」ではなく「根管」ですよ。

根管治療には①神経を取る治療(初回)と②再治療(根管治療がうまくいっていないので再度治療すること)があります。

どんな人でも歯が生えてくる時は虫歯はないわけですから、その歯の最初の根管治療は神経をとる治療になることが多いわけです。

この一番最初の根管治療がものすごく大事なんです。
再治療の成功率は低くなるので、ここでしっかり治療しておきたいところです。

日本人の平均寿命は80歳以上です。
私は今ちょうど人生の半分を過ぎたところなので後40年自分の歯で過ごしたいです。

どうすればよいのか。

やはり予防が1番。
ただ、病気になってしまったらその時ベストな治療をうけるのが歯を永く保たせる大事なことです。

再治療の繰り返しは歯に負担が大きくかかります。
その最たるものが根管治療だと思います。

当院でも相当根の治療で苦しんだ患者さんが多数お見えになりますが、今のところほとんどの人が顕微鏡根管治療(マイクロエンド)によって良好な状態になっております。
ただ、根管治療は再治療の度にどんどん難しくなってしまうので、できればその時にきちんとした治療をうけることが望ましいと思います。

医療は決して完璧ではありません。再治療ごとに成功率はどんどん下がります。

医療は制度と切り離しては考えられません。
現行の保険医療(歯科)はいいところもありますが、様々な問題を抱えています。
『生涯自分の歯で人生を全うする』これを保険歯科医療で実現するのは私は今のところ悲観的です。

もう日本歯科医師会で何かをかえることは個人的にはほぼできないと思っています。
皆さんの声が唯一現状をかえることができるのだと思います。

無関心では前に進みません。特に健康に関することなのですから。
少しでも正確な情報を発信していけたらな、と思います。

根管治療は日常よく行われる治療で、この治療が上手くいくかどうかで歯の寿命もかわってきます。
それなのに。。。

初日は特にこれといった内容はありませんでした笑

歯内療法学会2日目。

平成21年では1年間に1千5百15万2千292件もの根の治療が行われたようです。(保険治療)

凄い数ですね。。。

感根処とはほぼ根の再治療と考えてください。
抜髄は神経をとることで、根の治療としては最初の治療になります。

年間700万本の歯の神経を除去していますが、この中で助けられる神経はなかったのでしょうか。

神経はなるべくとらないほうが歯のためです。
もちろんとらなくてはいけない神経もあります。

今日おみえになった患者さんの虫歯はものすごく大きなものでしたが、幸い神経を取らずにすみました。

私はこのような歯は顕微鏡治療(マイクロスコープ)でないと助けられる自信がありません。
虫歯を過不足なく除去することは意外と難しいことなのです。

神経が露出したら抜髄になるとは決して言えません。
そのためにも治療はラバーダム下で行うことが必須です。
ラバーダムをしなければ神経に細菌が侵入してしまう危険性が高まり、治療の成功率が低下してしまうからです。

この700万本の歯のうち顕微鏡治療ならどれだけ神経をとらずに済んだのか、考えてみるとちょっと残念です。

再治療に至っては年間800万本以上の歯に行われ、このうち何本が抜歯になったのでしょうか。
海外の根管治療の成功率は70〜90%
日本の根管治療の成功率は30〜40%と言われています。

根管治療がうまくいかなければ残る手段は抜歯です。
インプラントもかなり信頼性のある治療法だと思いますが、自分の歯が残せる可能性があるならばやはり天然歯を大事にしたいところです。
そこに費用をかける価値は大きいと思います。

インプラントの費用は各歯科医院で違いますが、概ね30〜50万円といったところでしょうか。
だいたい皆さんはインプラント治療は高額だということは知っていますが、自分の歯を残す治療が40万円(根管治療+クラウン)です、と言われるとすごく驚かれます。

日本の根管治療の成功率の悪さの最大の原因は治療費の安すぎさにあると思っています。
これはどんな綺麗事を言っても、現実です。

私が経験してきたことや、知りうる範囲の歯医者さんでは保険の効かないセラミックやホワイトニングは患者さんに勧めることはあっても、歯をもたすための根管治療の自由診療を勧めることは決してありませんでした。

これは世間の認知度も低いということもあるし、歯科界が積極的に啓蒙してこなかった結果でもあります。
保険制度が障壁になり啓蒙が困難な状況であるのも間違いありません。

もう今更保険の根管治療にどっぷり浸かっている歯医者さんで自由診療の顕微鏡治療をお願いしますと言っても、多分患者さんの期待には応えられる結果は出せないのだと思います。

強調しておきたいことは、決して保険治療を否定しているわけではありません。
日本の保険治療のように世界中どこの国を探しても、この費用で歯科治療をしてくれる国はありませんし、ある一定の成果は確実にあります。

ただ、それでうまくいっていない患者さんに対しての情報があまりにも少なすぎます。

役割分担がうまく機能して、もっと私たちが情報発信をして、より質の高い歯科治療を受けたい人に届くようにしないと思っています。

今回の学会のテーマは「歯内療法の未来を考える」ですが、広く一般的に顕微鏡根管治療(マイクロエンド)の認知度が広がって救える歯が増えることを切に願っています。

それにしても歯内療法学会に2日間参加しましたが、盛り上がっていない。。。。
世界的には根管治療は花形の部門なのに日本では人気が無いようです。

数年前に歯周病学会にも参加したのですが、盛り上がっていなかった。。。

久しぶりの学会参加、しかも華の都東京なのに、寂しかった。。。

でもでも個人的にはいつも盛り上がっていますので、また機会があったら参加しようかと思います。

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顕微鏡根管治療(マイクロエンド)の予後について

日本の根管治療事情

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔