日頃行なっている顕微鏡根管治療(マイクロエンド)では、前医が治療した歯の再根管治療をすることが多いです。
今回は2症例の顕微鏡根管治療(マイクロエンド)を紹介します

2012年10月8日の投稿を加筆修正

根尖病変の原因は細菌で、その治療法は可能な限り細菌を取り除く・新たに入れないに尽きます。

この患者さんは過去に保険の根管治療を行いましたが、骨が膿んでしまう根尖病変ができてしまいました。

根尖病変は自然には治りません。
細菌を可能な限り減らさないと治らないのですが、この歯にはレッジができてしまっています。

レッジができてしまうと本来の根管を探すことが難しくなり、感染物質の除去ができなくなり治りにくくなります。

どうしてレッジを作ってしまうのでしょうか。
・歯医者の知識不足
・ステンレススチールファイルでの拡大
が考えられます。

無菌的処置による根管治療後1年

根尖病変は小さくなりました。

多くの保険の根管治療はラバーダムをせず、手探り・知識不足による器具操作で、本来の神経のトンネルではなく人為的に穴を開けてどんどん掘り下げていくことが多いのです。

ですから、掃除をしなければいけない本来の神経のトンネルは掃除をされずにそのままになります。

今回は自由診療により、十分な治療時間と顕微鏡を使用することにより、見失われた根管を掃除することができました。

1年後のレントゲン写真では病変は小さくなっているようです。
治療回数は3回、費用は顕微鏡根管治療(マイクロエンド)約13万円です。

感染根管の治療評価は4年が目安です。
ですから本当の意味での治療の成功かどうかの評価は現時点ではできません。

患歯には適合の悪い修復物が施されていました。
修復物はフタの役割をしているので、これの適合が悪いと隙間からバイ菌が根管内に入ってしまいます。
報告では最短で3日、最長で90日には根の先端に到達するそうです。

今回はレッジの部分をうまく本来の根管に修正できたから病変の縮小がみられたのか、あるいは主根管を掃除しフタをきちんと適正なものにしたからそうなったのかはわかりません。

確実に言えることは、科学的な根拠のある治療法で各ステップを的確に積み重ねることが大事なのではないでしょうか。

別の患者さん
2012年1月6日初診

患者さんは上顎の前歯の根管治療とセラミック冠の治療を他院でおこなっておりました。

しかしその後根の具合が悪くなり、そのうちの1本は根尖切除が施されていました。

今回は右上側切歯の根の具合が悪くなってしまいました。

比較的最近被せた歯で、費用もかかったので、できれば 外したくないという希望がありました。

諸々の注意点を説明しご理解いただいてから治療にはいりました。

治療の模様はYou Tubeにアップしておりますのでどうぞご覧ください。

2012年5月19日治療直後
通法に従い根管治療をおこないMTAで根管充塡しました。

この治療で難しかったところは、差し歯の裏側から小さな穴を開けてその穴から長い金属の杭を取り除くことでした。

もし削る方向を誤ってしまうと歯に穴を開けてしまい(パーフォレーション)、歯を治療しているのか壊しているのかわからなくなってしまいます。

これは顕微鏡(マイクロスコープ)があるからできることです。
マイクロスコープで「見ながら」削ることができるのでパーフォレーションせずに安全にメタルコアの除去ができたのです。

しかしマイクロスコープを使っているという歯医者さんが全員「見ながら」治療するということを重視しているわけではありません。

いつも本当に不思議だと思うのですが、「マイクロスコープを使うと今まで見えなかったものが見えて感動した」とか「もう、肉眼で見えない治療はできない」という歯医者さんをたくさん見てきましたが、歯科治療で多くの場面で「見えなくなる」のは死角です。

小さなものを拡大してみることは比較的簡単なことなのですが、死角を「見る」にはミラーテクニックは必須の技術です。

でもこういうことを主張している顕微鏡歯科医師は極少数です。

要は顕微鏡を購入して練習なしですぐに始められるのがミラーを使わない治療なのです。
拡大はするけど手探り治療ということです。

2012年10月5日
約5ヶ月後

骨の透過像はかなり縮小しました。

まだまだ予後を追わなければいけないのですが今のところ順調です。
治療回数は3回、費用は顕微鏡根管治療(マイクロエンド)やく12万円。

患者さんは治療後、ご主人の転勤で四国に住んでおりますが、今回こちらの実家に来られたついでに来院してくださいました。

根管治療をおろそかにしてその上に冠をかぶせても後々大変な目に遭います。
今回は差し歯を外しませんでしたが、本来は外して感染源が無いかを確認するのが基本です。

差し歯を外さないで治療を希望されてもできない場合が多いということはご理解ください。

折角治療したクラウンのやり直しの多くの原因は根尖病変、根の病気の再発です。
今回のようにセラミックのクラウンを装着しても、根の治療がしっかりできていなければ元も子もありません。

根の具合が悪くお困りの方は非常に多いと思いますし、もし抜歯を提案されたのならどうぞ一度ご相談ください。

そろそろ自分の症例でも予後の評価ができる月日が経ち始めたので、皆さんに報告できるように整理しておきますね。

追記

その後、久しぶりに患者さんが来院しました。
他の歯の不具合で。

せっかくなので治療した歯の経過をレントゲン写真で確認しました

治療後7年ほど経過しましたがとても良い状態です。

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おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔