2018
9/21
顕微鏡がもたらした医学の発展とこれからの歯科医療
- 2018.09.21
- ブログ歯記
- 歯科医療・ 顕微鏡歯科治療(マイクロスコープ)
顕微鏡が医学の発展に大きな影響を与えました。
現代では顕微鏡を応用して私たちの生活を豊かにしてくれています。
今回は顕微鏡の歴史をほんのちょっと紹介し、歯科医療と顕微鏡につて私の考えを記述しました。
2013年3月12日の投稿を加筆修正
その昔。
まだ細菌の存在がわからなかった時代がありました。
その時代のお産は命がけでした。
当時の医師達は他の患者の診察や死体を素手で解剖してそのままお産に向かっていました。
お母さんの死亡率が高かったようです。
一方、助産師達がお産を手がけるとお母さんの死亡率が低かったようです。
1846年にようやく手洗いすることによってお産の時の死亡率が下がることがわかりはじめ、その後細菌学の父コッホなどの研究者により感染症と細菌の関与が究明されてきました。
コッホが使用した顕微鏡がカールツァイスなのです。
カール・フリードリヒ・ツァイス 、エルンスト・アッべ、オットー・ショットにより、現代でも顕微鏡といえばカールツァイス 社製と言われるくらい高品質の顕微鏡を開発しました。
この時代の顕微鏡はカールツァイスしかなく、医学の発展のため無償で後発のライカなどに技術を提供したようです。
医学の発達はまさに顕微鏡の発達とともにあったのです。
そして人類は昔も今も細菌と戦い続けているのです。
虫歯や歯周病も細菌が原因なので、歯科でも細菌と戦い続けているのです。
現在では電子顕微鏡の出現により医学だけではなく様々な分野の発達にも寄与しています。
実際の治療ではどうなのか。
脳外科、眼科、耳鼻科などはすでに実体顕微鏡での治療は当たり前のようになっています。
なぜなのか。
見えるからです。
見えないとできないからです。
医科では議論の余地がないほど顕微鏡と治療が結びついているのに残念ながら歯科は結びついていません。
その証拠に95%以上の歯科医院に顕微鏡はないんです。
実に5%弱の歯科医院にしかありません。
しかも本当に使えている歯科医師はさらに少ないのでしょう。
医療制度の影響なんでしょうか?
安価な保険の歯科治療費ではできないという部分も多分にあるのでしょう。
だったら妥当な治療費を頂いてもきちんとした医療を提供するという方法もあります。
でも、大多数の歯医者が顕微鏡なんてなくても治療できるよと考ているみたいです。
歴史を振り返ると、顕微鏡によって医療が発達してきたんですよ。
歯科だけが例外なのでしょうか?
見えなきゃできないのに、なんだか小難しいことを言う人が多すぎるような気がします。
歯科には日本顕微鏡歯科学会というものがあります。
これは決して顕微鏡の構造などを追求する学会ではありません。
顕微鏡を使うことにより歯科医療がよりよくなるための可能性を探求するための学会です。
医科では内視鏡学会だけでも外科や呼吸器、消化器などいくつもの科の学会があるようです。
きっと内視鏡によって今までの医療ではできなかった可能性を医師達が感じているためだと思います。
なんで歯科ではこの可能性を感じない歯医者さんが多いのでしょうか。
保険制度に問題があるのならその制度に縛られないようにすればいいのに。
私もそれが難しいことは十分承知の上です。
でも、その一歩がないと前に進まないのが現実なんです。
私が初めて顕微鏡(マイクロスコープ)で歯を見たのは右上の奥歯でした。
まだ20代の女性で歯周病のない歯肉だったのですが、辺縁歯肉の直上に歯垢が環状に歯に付着しているのですが、歯肉溝から滲出液が排出され歯肉溝内には歯垢の侵入は一切許していない、という場面でした。
当時歯科医師になって十数年経っていましたが、歯をまじまじと観察したのは初めてだったと記憶しています。
そこから私の顕微鏡歯科治療が始まったわけです。
アラフォーと言われる30代後半でのマイクロスコープとの出会いは私にとっては非常に幸運でした。
マイクロスコープに出会う前は当然肉眼での治療でしたので、今から思えば歯科治療を肉眼で行うその無謀さをしみじみ感じています。
今までは見えなかったので気づかずにやり過ごしていたことがとても多いことに気づきました。
今では根管治療、レジン修復、クラウン、歯周病治療、親知らず抜歯などすべてで活用しており、もう顕微鏡を使わない歯科治療は私にはできなくなっています。
どの治療においても見えるから安心して確実に治療ができます。
顕微鏡を使っていない歯科医療従事者で「見えるのと治せるのは違う」と言う人がいます。
もちろん顕微鏡を使えばすべて治せるわけではありません。
でも、見えなければ治せるわけがないし、見えないがために原因がわからず不毛な治療を長期に渡って続けている患者さんだって多くいるわけなので、「見える」ことはやはり利点の多いことだと思います。
今まで自分も「見えていない」治療を10年以上やっていたので見えることの大事さは痛感しています。
でも「顕微鏡使わなくても自分は見える」と言う歯医者も多くいます。
顕微鏡を使う使わないは自由だし、色々なタイプの歯科医院があって当たり前です。
コンビニより多い歯医者とバカにしたようにメディアでは取り上げていますが、歯科医院も歯科医師の考え方によって治療の仕方が全く違うので、皆さんも歯医者という一括りで考えずに、自分が求めている歯科治療を行っている歯科医院どこにあるのか調べることもお勧めします。
どこの歯科医院も同じことをしているわけではありませんから。
私たちが考える「歯科治療に適した顕微鏡治療」を患者さんに啓蒙、実施する組織が顕微鏡ネットワークジャパンです。
顕微鏡歯科ネットワークジャパンでは、これから歯科医師、一般の方々に草の根でこの顕微鏡治療についてご紹介していく予定です。
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表 茂稔