退化という進化をした親知らず。
折角生まれてきたのに、後に災いをもたらすことが多いため抜かれることもしばしば。
埋もれている親知らずは患者さんを憂鬱にさせることも多いので、なるべく苦痛の少ない対処法が必要です。

遥か昔の猿人の第三大臼歯(親知らず)は32本の歯の中で最大の大きさでしたが、徐々に歯のサイズが小さくなる傾向にあり、現代人では矮小化が進んでいるようです。

折角生まれてきたのに、様々な要因で真横になって埋まっている親知らずは後々厄介なことになることも多いのです。

患者さんは20代男性。
右下の親知らずを抜歯します。

真横になっている親知らずの隣の歯の矢印部分が虫歯になる可能性が高くなります。

歯の側面が虫歯になるとそのダメージはかなり大きなものになります。

私としてはこのような親知らずは若いうちに、症状が出ていないうちに抜歯をすることをお勧めしています。

なるべく抜歯(後)の苦痛を軽減するために私の抜歯法は顕微鏡によるミラーテクニックでの方法です。

この方法は勘や感覚だけに頼らず、目で見ながら治療ができるため切開の量も大きくしないで済むし、骨を削らずに抜いてしまう親知らずの方を削って抜歯するので、抜歯後の苦痛が最小限に抑えられます。

もちろん他のやり方で苦痛を最小限に抑えて抜歯する歯科医師もたくさんいらっしゃいます。

私が20代の頃アルバイトをしていた歯科医院の院長は、埋伏している親知らずは治療費の割にはリスクが高いし、抜歯後痛いとか腫れたとか言われると医院の噂が悪くなるから全部歯科大病院へ送れ、と指示していました。

これはこれで悪くないと思います。

剥離も必要最小限にします。

真横になっている親知らずを分割して抜歯しますが、手前の歯が邪魔になりほぼ見えない状態になります。

でもミラーテクニックならご覧のように死角でも見ながら分割ができます。

見ながらできるので安全なのです。
見ながらできるので切開・剥離が最小限で済むのです。

見ながらできるので骨を削らずに歯だけを削れるのです。

術前はCTで十分シュミレーションをしてイメージトレーニングをしてシュミレーションします。

どんどん深部に進んでも見えるので安心して切削をすすめることができます。
私は臆病なので見えないままドリルで切削することが怖くてたまりません。

今回は切削予定部位と下歯槽管(血管・神経)はかなり離れているので勘や感覚だけで切削してもそれほど問題はないのかもしれません。

見ながら切削を進め歯冠底部まで到達しました。

更に歯冠を分割し、小さな出口から取り出せるサイズになるまで親知らずを削ります。

なるべく骨を削らないよにするため、歯を削る時間が長くなってしまいますがその方が抜歯後の痛みや腫れは少ないでしょう。
小さくしてから取り出します。

歯冠を全て取り出したら次は歯根を取り出します。
歯根は2根あり、その先端は曲がっています。

歯根の先端部の舌側皮質骨は薄いので押し込んで隙に迷入させないように注意が必要です。
見ながら抜歯ができるので、確実に歯根膜腔に器具を挿入できるので確実に安心して脱臼できます。

最後の近心根を取り除きます。

抜歯窩を確認した後縫合して終了です。

根の先端が曲がっていたので念の為レントゲンで確認しました。

1週間後抜糸時、特に痛みや腫れはなかったそうです。

私の埋伏智歯の抜歯の仕方はとにかく歯を分割します。

折角歯として生まれてきたのに中途半端は生え方になったばかりに抜かれる運命になるなんて。
ちょっぴり可愛そうですが仕方がないです。

水の呼吸 伍ノ型 干天の慈雨でなるべく痛みを感じないようにします。

顕微鏡治療による埋伏歯抜歯
治療費:5万円(CT代別途15,000円)
治療時間:約1時間

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔