歯科治療の役割の一つに機能回復があります。
根管治療後の歯にクラウンを装着することで咀嚼という機能を回復します。
根管治療の成否の見極めはある程度の期間を要します。
精密治療の積み重ねで結果を出し続けています。

患者さんは30代男性で、左側下顎第一大臼歯(左下6)の根尖病変とパーフォレーションの治療のため根管治療を施した後のクラウンの治療です。

困難を治療する根管治療

根尖病変が治ったかどうかの判断は数ヶ月経ってレントゲン写真を撮影し、根尖周囲の透過像の消失を確認します。
もちろん患者さん自身の咬合痛の有無などの自覚症状も確認します。

しかしずっと仮封の状態も好ましくありません。
なるべく早くコア(土台)にしたほうが感染の危険性を回避できると言われています。

根管治療の専門の先生はあまり重要視していないようですが、歯冠を失っている歯の隣在歯が傾斜してきたり、対合歯の挺出の問題もあるので早期に歯冠の回復をしたほうが良いと思います。

当院では根管治療後は速やかにコアを築造して仮歯をいれます。

患者さん個々の状態によりクラウンの印象の準備をしつつ根管治療後の経過を見ていきます。

根管治療後からクラウンの印象まで4回ほど来院してもらい、形成を仕上げていき仮歯の調整をしていきます。
期間は1ヶ月強意図的にかけています。

根管充填後の症状を確認して、ラバーダムを装着し内部をきれいにします。

接着は細部に渡って配慮しないと接着不良を起こしてしまいます。
水分・湿度対策はとても重要で、唾液にまみれている環境では正確な接着操作はできません。

一気に多量に硬化させると重合収縮の量が多くなり接着面にギャップが生じてしまいます。
少量ずつ盛っては硬化させて、なるべくギャップが生じないように配慮します。

ここまで配慮してもどうしてもコントラクションギャップは生じてしまうので、フェルールはとても重要です。
フェルールがない歯は挺出させてフェルールを得ることが長持ちさせる秘訣の一つです。

フェルールは歯肉の上に健康な歯質が約3ミリくらいは欲しいところです。

クラウンは歯の周囲360度ぐるっと正確に形成する必要があります。

頬側の形成

おもて歯科医院の顕微鏡治療はミラーテクニックを主体とした治療法です。

よって死角に甘んじて勘で形成することはありません。

同じ頬側でも遠心と近心とではミラーの角度を微妙に変えます。

舌側の形成も見ながら正確に形成します。

舌側の近心もミラーの角度を微妙に変えて見ながら形成します。
ミラーワークを行うことで常に見ながら治療することができます。

近心面の形成

隣接面の形成は隣在歯の誤切削に注意しなければいけません。

近心舌側隅角部の形成

隅角部は歯のカーブの変曲点になるところなので形成しにくい部位ですが、ミラーテクニックを修得すれば普通にできます。

遠心面の形成も難なく形成できます。

クラウンのマージンを縁下に設定する場合は歯肉圧排を行う必要があります。
歯肉圧排には3-0縫合糸を用います。

形成は大まかな形成から順に細部の細やかな形成をしていきますが、徐々に拡大倍率を上げてフィニッシングラインを整えていきます。

ファインバーでの頬側の形成

ファインバーでの舌側の形成

仮歯は形成の都度調整をしますので、次第に精度のよい仮歯になっていきます。

スーパーファインバーで仕上げ形成をします。
この段階では歯を削るのではなく、フィニッシングラインにカンナをかけるような感覚です。

頬側

舌側

仮歯の最終調整

仮歯で日常生活に不便がなく咬合痛などの症状がないかを確認します。
歯肉の状態や清掃のしやすさも確認します。

この時点で根管治療後から1ヶ月半以上経過しており、この後クラウンの製作に1ヶ月ほどかかります。

根管治療の手応えや病変の大きさ、仮歯期間中での具合などから判断し、問題がないと判断したら印象します。
これは自分の経験からくる主観で判断しています。

印象

印象面の確認

頬側

舌側

約1ヶ月後にジルコニアクラウンが納品されます。

必ず模型上での適合状態を確認します。

実際の口腔内の適合状態
頬側

舌側

根管治療〜クラウン装着まで約5ヶ月。
病気を治し機能を回復するまでの期間です。

ジルコニアクラウンを装着して4ヶ月後、根管治療後7ヶ月。

治療前

治療後

顕微鏡根管治療
治療費:約25万円
回数:4回

ジルコニアクラウン
治療費:約20万円
回数:5回

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔