2021
10/31
虫歯をどこまでとるのか
- 2021.10.31
- ブログ歯記
- ミラーテクニック・ 顕微鏡歯科治療(マイクロスコープ)
虫歯の治療を経験したことが無いという人は殆どいないくらい多くの人が虫歯治療を経験していると思います。
一体虫歯はどこまでとればいいのか、どの程度の虫歯なら治療すべきなのか。
「虫歯を取る」と一口に言っても、その基準は歯科医師によって様々。
色が付いてるくらいの小さなものでも削る歯医者もいれば柔らかくなってしまっている虫歯を残す歯医者もいるのでしょう。
患者さんの口腔衛生状態やその時の状況によってそうせざるを得ない事もあると思うので、一概に間違ってるだの、なんなのだのと批判することはできません。
虫歯は細菌による病気なので、できるだけ除去したほうが良いと個人的には思います。
虫歯を除去するための要点はいくつかありますが、その中で私が一番重要視しているのは「見ながら治療する」です。
そんなの当たり前だと思うかもしれませんが、大学教育では「見ながら治療する」ということを教育していません。
一つの要因としてワンオペができて一人前という風潮があるのかもしれません。
ミラーテクニックでないと見ながら治療することは不可能です。
ここで言う「見える」という言葉は3次元的に見えるということです。
ミラーテクニックは技術習得が難しいこともあるのですが、ワンオペではなかなか難しいことです。
どうして歯科はワンオペという風潮になったのかはわかりません。
保険の治療費が安いため人件費の節約のためだからなのでしょうか。
そんな延長線上で顕微鏡治療をやってみようか、という歯医者が増えてきたので話がややこしくなります。
見える治療はミラーテクニックが必須なのにワンオペでやるからアクティブサイトウィズミラーができません。
簡単に言えばミラーを使って3次元的に治療部位を見ながら治療することができないのです。
顕微鏡は使っていてもミラーを使わずに死角部分は手探り治療、フォーカスがあっておらずぼやけたまま歯を削るなど多彩です。
歯科治療の基本は直視直逹と言われていますが、笑っちゃうくらい軽視されてます。
軽視ではなくそれが見えていないことに気づいてないのかもしれません。
今の所ミラーテクニックとフットペダルで倍率とフォーカスを調節できるモータライズドマイクロスコープの組み合わせが本質的な顕微鏡治療だと言えます。
唯一の顕微鏡治療と置き換える事もできると思います。
患者さんは60代女性で左上の詰め物が取れたということで5年ぶりに来院されました。
以前顕微鏡治療をやってみてとてもよかったのでこちらの歯の治療も顕微鏡治療をお願いしますと。
写真1
基本的にどんな修復治療をするにしてもラバーダムは装着します。
今回は露髄(神経が出てしまう)恐れがあるのでなおさらです。
写真2
見ながら治療する。
これがアクティブサイトウィズミラーです。
ミラーで確認して、削るときはミラーをどかしてなんとなく削る。
多くの歯医者さんはこのやり方なんだと思います。
写真3
さらに状況に合わせて拡大をする。
フットペダルでフォーカスと倍率を調整できるモータライズドマイクロスコープだから可能なのです。
写真4
倍率をかえればフォーカスが合わなくなりますし、治療が深部、近心、遠心など移動するにつれてフォーカスが合わなくなります。
フォーカスが合ってないということは見えていないということです。
モータライズドマイクロスコープとアクティブサイトウィズミラーの治療をしていると、そうでない先生の発表を見ているととても違和感を感じます。
「見えていない」のです。
さらにミラーテクニックでは視座を変えることによって容易に視点を変えることができます。
写真5
写真4と5を見比べてください。
違いがわかりますか?
顕微鏡はアームで吊るされているので、手で動かさないと動きません。
私達はものを立体視するために頭を動かし様々な方向から対象物を3次元的に把握します。
視座を変えて色々な方向から視点を変えているのですね。
そうすることで死角だった部位が見えるようにもなります。
いわゆる直視というやり方で顕微鏡治療なるものをやっている歯医者は、ずーっと頭を固定しているので視座はそのままで視点は限局された範囲になってしまうため立体視ができませんし死角を見ることができません。
でも世の中にはこの常識を覆すような3D直視というものがあるらしく、視座を固定しても立体視ができる顕微鏡の使い方があるようです。
皮肉ですよ。
日本顕微鏡歯科学会の認定医や指導医でさえもあまり理解されていなのかもしれません。
治療を進めていくと象牙質内にクラックが認められました。
写真6
私は症状がなくでも象牙質内にクラックがあったらクラウンを強くお勧めします。
エナメル質を切削してしまうので適合精度の高いクラウンのことです。
柔らかい虫歯をおおかた除去した後は、判断が分かれるのがここから先になるのだろうと思います。
写真7
う蝕検知液や硬さ、色などの情報を参考にしながらまずはう蝕検知液で染まった部分を選択的に除去します。
写真8
ちなみに私が顕微鏡治療を行うときは倍率やフォーカスを頻繁に調節しています。
手ではなく足で調節できるから頻繁に倍率とフォーカスを調節できるのです。
ということは、ダイヤル式のマニュアルマイクロスコープの場合手で調節することになるので治療を中断して調節するわけです。
私がフットペダルで調節している頻度を手に置き換えるとしたら治療になりません。
もうおわかりですね。
モータライズドマイクロスコープでないと本当の意味での見える治療はできないのです。
私自身マニュアルマイクロスコープを使っていた経験があるのでよく分かるのです。
その当時は見えているつもりでした。
でもね、本当に見えるということを知らなかったのでそれで十分だと信じていました。
それがですね、過去の自分の記録映像を見ると、見えていないんです。
人は経験したことしか知らないんです。
三橋純先生がよくおっしゃっています。
経験したことがないことを理解することはできないんですと。
私が使用しているモータライズドマイクロスコープはカールツァイス社のOPMI PROergoです
これがフットペダル。
フットペダルで倍率とフォーカスを調節する。
もうすぐ改良版のフットペダルが届く予定です。
そしてマニュアルマイクロスコープ。
カールツァイス社のOPMI pico MORA
手でダイヤル操作をして倍率とフォーカスを調節するため医科では検査用顕微鏡として扱われる。
手術用顕微鏡とはモータライズドマイクロスコープのことである。
写真9
クラックがあるので患者さんとよく相談をしてクラウンの治療をしていくことになりました。
写真10
私が最終的に色々な情報から判断し、モータライズドマイクロスコープとアクティブサイトミラーテクニックで虫歯を除去したのが写真11です。
写真11
写真7と比較してください
写真7
写真11では随分明るく見えますね。
だいぶ深い虫歯だったので間接覆髄でMTAセメントを裏層してグラスアイオノマーセメントで仮封しました。
写真12
今後は適合精度の高いクラウンにより辺縁封鎖性を高め内部に漏洩がないような補綴物を作製してきます。
虫歯除去・間接覆髄 1回 67,000円
その後のクラウン 約20万円(約4回)
おもて歯科医院
歯学博士
表 茂稔