ある顕微鏡歯科医院で診査をしたにも関わらず、当院を受診した患者さん。
どうして当院で治療することになったのでしょうか。
当院の何がその患者さんの心に響いたのでしょうか。

都内の顕微鏡をやっている歯科医院でみてもらったのだけど、治療費が高すぎるのでそちらで一度診てもらえますか?

という患者さんが来院されました。

私は今まで、患者さんが通っていた歯科医院の名前を尋ねたことはないし、ましてや治療費が幾らかだなんて一度も尋ねたことはありません。

患者さんはその歯科医院で渡された写真付きの診査結果の用紙をお持ちになり、私に見せてくれました。
そこの歯科医院は主に写真で説明をするみたいです。

確かに、診査の結果をプリントしてお渡しするとわかりやすいですね。
患者さんは説明されてその時はなるほどと分かっても、後になると忘れてしまいますよね。

当院も検討してみます。

新ためて私がお口の中をチェックすると、その診査結果に記載されていない大きな虫歯が見つかりました。

おもて歯科医院では、診査結果をプリントしていない代わりに、必ず動画で説明します。

全て記録を保管していますので、後日でも再び瞬時にお見せすることができます。

大きな虫歯は左上奥歯の頬側にありました。

すでに大きなインレーが装着されているので、治療法はクラウン(冠をかぶせる治療)を提案しました。

治療費は
う蝕除去  24,000
築造 25,000
ジルコニアクラウン 170,000

初診・再診、仮歯等を合計すると約260,000円(税別)ほどかかります。
当院の治療費が安いのかどうかわかりませんが、その場でこの治療法をご希望されました。

私が受けた印象では、初めて見た自分の歯の状態が、動画によってリアルに映し出されて、私の説明に説得力が付加されたのかも知れません。

最初に会った時の患者さんの私が受けた印象は、チョット苦手かも〜と思いましたが、治療の最終日まで終始機嫌よく来院されて、私も心穏やかに治療に打ち込むことができました。

問題の虫歯ですが、かなり大きい虫歯が歯の脇にできてしまっていたので、神経が露出する危険性がありました。

もし露出して感染してしまうといけないので、ラバーダムを装着して虫歯を除去しました。

虫歯を削り進めると次第にその全貌が見え始めました。

実は患者さんは近々医科で手術の予定が入っており、それまでに歯の治療を終えたいとの希望です。

虫歯は大きいし歯冠長も短く、冠を被せるには不利な環境でしたが、限られた条件の中でベストを尽くしました。

私の顕微鏡治療は処置するその場所を見ながら治療します。

だから繊細な治療ができます。

虫歯の最終除去はよく研いだ手用器具を使用しました。

この後築造をしてこの日は終了。
当然その日に行った治療は、口を濯いだあと直ぐに動画で説明します。
おもて歯科医院のスタイルです。

次回来院時に、あんなに大きな虫歯をとっても痛くなかったし、麻酔も全く痛くなかったとお喜びになっていました。

クラウンを被せるための形成もミラーテクニックなら、患者さんに無理な開口と頭位を強いなくても大丈夫です。
それでいて見ながら治療できるメリットがあります。

ですから大抵の患者さんは治療中寝ています。

適合の良い仮歯を装着することでブラッシングをきちんとやって貰い、歯肉のコンディションを整えます。
噛んだ時の痛みは無いか、仮歯が脱離せずに安定しているかなどをチェックし、準備が整ったら型採りを行います。

仮歯に不具合があるのに本番の歯が自動的に具合が良くなるわけありません。

ちなみに、患者さんは歯磨きの状態があまり良くなかったので、型採りまでの間に何回かブラッシングの練習だけで来院して貰いました。

型採り

型採りのチェック

こうしてようやく大きな虫歯があった歯にクラウンを被せることができました。

治療期間中は痛みや仮歯の脱離もなく順調に進めることができました。

患者さんは旧おもて歯科医院の頃にいらして、新おもて歯科医院での患者さん1号だったんです。

患者さんも移転を楽しみにしてくださり、新おもて歯科医院1号であったことを喜んでおられました。

この後手術をする予定だとおっしゃっていました。

人には相性というものがあります。
お互いのコミュニケーションがとれることが歯科治療を成功させる一つの要素だと考えています。

移転して今まで以上に多くの患者さんと出会う機会に恵まれましたが、人間ってホント多様だな〜って思う今日この頃です。

治療そのものに集中したいところですが、人間関係も含めて歯科医療なんですよね。
寧ろそっちが大事なんだと再確認しました。

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔