外科処置は誰にとっても怖いものです。
術中の痛みの不安、術後の腫れや痛みの心配。
歯科では親知らず抜歯が代表的な外科処置ですが、抜歯後に腫れたり痛みがずっと続いていた体験談を聞くと、ちょっと抜歯するのをためらっちゃいますよね。

患者さんは20代男性。

過去の親知らず抜歯で、全く痛くなく腫れなくてとても楽だったという素晴らしい体験をお持ちの患者さんです。

患歯は右上の親知らず。

親知らずの頭の一部がほんのちょっぴり顔を出していて、歯の殆どが埋まっている状態です。

レントゲン写真では、隣の歯に食い込んでいるかのように見えます。

今回抜歯予定の親知らずは③の親知らずです。

実はこの患者さんの素晴らしい親知らず抜歯体験談は当院で抜歯したものなのです。

親知らず抜歯3連続

前回②の右下親知らずを抜いた後、全く痛くなく腫れもしなかったのでさすが先生、腕が違いますね等たくさんの褒め言葉を戴いて次の親知らず抜歯のハードルをかなり高くしてくれました笑。

ハードルが高くなろうが、やることはいつも一緒です。

口腔内をきれいにした後切開をします。

術後の不快症状を少なくするのであれば組織への侵襲は最小限にしたほうが良いことは誰もがわかることです。

その最初の一歩が切開です。

あまりにも非侵襲性にとらわれて安全を犠牲にすることは本末転倒ですが、この辺の加減は経験によって大きく変わるものだと思います。

剥離量も術後の痛みに直結しますので、軟組織を優しく丁寧に扱い剥離します。

剥離を最小にとどめた後は歯冠を分割し除去します。

私が知る限りでは、口腔外科の書籍、専門の先生は上顎の埋伏智歯は歯冠を分割してはならないとおっしゃっています。
理由は、見えないので盲目的になってしまうからとのことです。
上顎は骨がそれほど硬くないため、頬側の骨を削除すれば親知らずは抜けるからだそうです。

顕微鏡で本当に見ながら治療している顕微鏡歯科医師の考え方は、親知らずを抜くことが目的ではなく隣の第二大臼歯を守るのが目的だと考えています。

頬側の骨がごっそりなくなってしまえば、骨の回復の足場もなくなってしまいます。

早くて大胆な外科処置は一見男らしくて手際がよく見えますが、それは親知らずを抜くことだけが目的ならそれはそれで良いと思います。

しかし顕微鏡歯科医師においては、上顎だろうが歯冠分割をすることに盲目的になることはないため、ためらわず歯冠分割をします。
第二大臼歯を守るために。

抜歯という小手術の範囲はまだまだ顕微鏡治療が行われていない分野なので、従来の口腔外科専門書にかかれていないこともこれからは情報共有されていくのではないでしょうか。

本当に見える顕微鏡治療にはミラーテクニックは必須で、そのミラーテクニックのエッセンスがギュッと詰まっている治療が支台歯形成です。

特に下顎の支台歯形成を顕微鏡ミラーテクニックで正確にできれば、埋伏智歯でも十分対応できます。

埋伏智歯は顕微鏡ミラーテクニックの応用編と言っても過言ではないと考えています。

親知らずは当たり前ですが一番奥にあります。

奥にあるので器具も口腔の深いところまで届かせなくてはいけません。
そうすれば自然と口周りに術者の手が近くなり、アシスタントも口腔内が見えにくくなり、サクションやリトラクターなどの器具をいれるのも大変になります。
これは12時の位置から治療する特徴的なことかもしれません。

アシスタントもモニターを見ながら補助できるようにしておくことが、円滑な治療をするためには必須です。

親知らず抜歯は痛くて腫れるのが当たり前という皆さんの認識を少しでも変えられたらいいなと思っています。

顕微鏡ミラーテクニックを用いず、低侵襲な埋伏智歯抜歯ができる先生は正直すごいなと思います。
自分には見えないところを治療することは自信がなくてできないです。
これは皮肉でもなんでもなく、本心ですごいと思うしさすが専門医だと思います。
男らしく短時間で大胆に削除するやり方をする歯科医師のことではないですよ。

歯冠と歯根の分割が終わったらそれぞれをとりだすだけです。

切開・剥離量が少ないので歯冠を更に分割することも多いです。
抜いてしまう歯をいくら分割しようが術後の痛みには全く関係ありませんからね。

歯冠を除去した後は歯根を除去します。
歯冠同様さらに分割することもあります。

顕微鏡ミラーテクニックでは12時の位置から治療しますが、特に外科治療用器具ではもうちょっと便利な器具があればいいなあと思うことがあります。

歯根を除去した後は抜歯窩を確認し掻爬します。

縫合は創面が小さいのでたいてい1糸のことが多いです。

術中術後の出血量も非常に少ないと感じています。

1週間後の抜糸時、患者さんは全く痛くなく本当に助かりますとおっしゃって下さいました。

歯科治療の多くは外科的な治療です。

外科的な治療にはどうしても術者の技術というものが反映されます。
私は歯科医師は特殊技能を有する技術職だと誇りをもっています。

だから勉強も練習も苦になりません。

私の技術と知識に対して患者さんは治療費という対価をお支払いしていただく。
その結果患者さんの口腔の健康を維持していく。

これが自由診療だと考えています。

顕微鏡親知らず抜歯
費用:5万円(税別) *難易度によって5〜10万円

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔