職業病。
それはついつい人の歯を見てしまう癖。
顔や名前を覚えてなくても、歯を見ると思い出すことがよくあります。
今回は根管治療に関連する患者さんとの偶然な出会いをブログに記します。

移転まもない5月の頃、30代の女性が左上奥歯の不調を訴え来院されました。

現在他院で治療中なのですが長い期間続く痛みと、重く感じる感覚と、下顎にかけて不具合を感じるというものでした。

一通り問診を終えたあと口の中の診査を行いました。

「なんか、見たことある風景。dejavu?」

そうなんです。
私は過去にこの患者さんを見たことがあるのです。

それはこの当時から遡ること10ヶ月前。
浦安市の休日当番で浦安市の健康センターでこの患者さんにお会いしているのです。

その時も治療中の左上奥歯の痛みでお見えになっていました。

なぜ私の記憶の中に残っていたのかというと、そのときに通院していた歯医者は保険治療で顕微鏡根管治療をしているところだとその患者さんは言っていたからです。

患歯を見たときの私の率直な感想は、
「なにこれ?」
でした。

休日当番では私の武器の顕微鏡はないので、ただの変哲もない歯科医師なのですが、それでも明らかに根管治療の原理原則から大きく外れているように見えました。

更に奥歯2本まとめて根管治療中でした。

第2大臼歯は裸眼の私でさえ歯根破折ではないかと思うような様相を呈していました。

患者さんに「10ヶ月前に浦安市の休日診療に行ったことありますか?」
と尋ねたら、やっぱり本人でした。

保険で顕微鏡根管治療。
良心的な歯医者なのですね。

私はこういう歯医者にとても憤慨しているし、似非顕微鏡治療を駆逐したいと常に思っています。

患者さんには、当院での顕微鏡根管治療は自由診療であることを説明し、治療費用は約20万円、冠をかぶせる治療費が別途約20万円の合計約40万円であることをご理解いただき治療を開始しました。

第二大臼歯は歯根破折と重度の感染歯質の広がりのため抜歯をすることにしました。

第一大臼歯だけはなんとしても残したいという患者さんの希望に応えるべく、全力で根管治療に取り組みました。

根管治療の成功の要件は、どれだけ感染源を減らせるか、です。

取っても取っても感染歯質が広がっていました。
この状況でいくら顕微鏡で治療したって治るわけがありません。

最終的に除去すべき歯質を削ったら、歯肉より下まで歯質を失うことになりました。

歯冠長延長術も検討しましたが、解剖学的な制限と費用、期間等の関係で行いませんでした。

歯質もだいぶ失われていますので隔壁を設置してラバーダムができるようにすることと、補強をすること、根管治療後の補綴を意識して歯肉縁下の対処をしました。

根管治療を進めていくと、口蓋根根管口付近にパーフォレーションしているところがありました。
通法に従いMTAセメントでパーフォレーションリペアをおこないました。

CTでは近心根は2根管あることが確認できたのでMB2を探索します。
未治療の根管内には当然壊死歯髄などの感染源が残ったままです。
MB2は完全独立したVertucciのtypeⅣでした。

近・遠心根にはレッジが形成されていたので、レッジの除去をします。
レッジがあるということは本来の根管には感染源が残されたままの可能性が高いので、なんとかしたいところです。

MB2は穿通したあと根管形成をおこないました。
デタラメに根管を触ってぐちゃぐちゃにされるより、このように未治療のほうがよっぽどやりやすいです。

根管洗浄は次亜塩素酸ナトリウムで20分以上洗浄します。

根管充填はMTAセメントで行いました。

現在根管治療後5ヶ月が経過し、仮歯で様子を見ていますが全く問題がありませんし、あれだけ歯肉縁下の歯質が失われたにも関わらず歯肉の状態も良いので、年明けに最終的なクラウンの印象をする予定です。

歯に対する価値観は人によって異なります。
たとえ夫婦でも家族でさえも全く異なります。

最近では患者さん本人は顕微鏡治療を希望しても家族に大反対されたという患者さんが何人か続きました。
費用の問題で。

ある患者さんの配偶者は、それだけの費用をかけるなら保証はどうなっているのか聞いてこいと言われました。
あなたの歯は家電ですか?

私は歯科医療を医療と考えていますので、人間の体に保証をするという考えは全くありません。

「モノ」に対する保守管理ならまだ理解はできます。

例えばクラウンが割れたとか。
歯根破折のことではないですよ。

もし保守管理をご希望の方はお申し出ください。
いまのところ3年保守で治療費の15%、5年保守で20%でお引き受けしようと考えています。

たとえばクラウン1本20万円なら、3年保守で20万+3万円です。

根管治療のように生体の治癒に関する治療は当てはまりません。

6ヶ月に1回の定期検診は必須です。
費用は5000円。