人が外界から得る全情報の80%は視覚から得られます。
それ程視覚は重要なのに、歯の治療は手探り治療が許容されています。
なぜ見えていない歯科治療を歯医者は放っておくのでしょうか。

自分の口の中を鏡で見てください。

暗ければ懐中電灯などで照らして下さい。

歯の隅々が見えますか?

歯医者の治療もこのような状態で治療します。

当たり前のことですが、口の中を正面から見れば必ず死角ができてしまい絶対に見ることができない部分が沢山あります。

死角に対しての解決法は
・内視鏡
・口腔内カメラ
・ミラーテクニック

これらに共通していることは、、、

そう、口の中に入れるということです。

たとえ顕微鏡を使っていたとしても、顕微鏡を口の中に入れない限り絶対に見えません。

いくら頬っぺたを引っ張ろうが何をしようが絶対に見えません。

滅多に断言しない私ですが、これだけは断言します。
見えません。

顕微鏡で死角を見る唯一の方法はミラーテクニックです。

この組み合わせが唯一死角部分を拡大できる方法なのです。

ミラーテクニックを身につけるにはトレーニングをしなければいけません。

この写真は私が初めて顕微鏡とミラーテクニックでクラウンの形成をした人工歯です。

10年以上前のことですが、かなり凹みました。

そうです。

見える顕微鏡治療と言いながら、全く見えていない治療をしていたのです。

歯科治療の結果は大抵月日が経たないとわかりません。

痛い、しみるという比較的短期の症状ももちろんありますが、これも見えていないことが原因である場合もあります。

虫歯を取り残そうが、隣の歯を誤切削しようが、見逃しがあろうが、ミス(見えていないので歯医者自身も気づいていない)をしようが、短期間では不具合が出ないことが多いのです。

歯科治療は減点法だと考えています。

100点を目指すなら取りこぼしやエラーを少なくすることがとても大事なのです。

歯が綺麗に白くなりました、痛みがなくなりました、噛めるようになりました。

一見とても良いように思いますが、見逃しがあった場合は快適になった期間は短くなる恐れがあります。

歯科治療では、見逃した部分がいつ何時悪影響を及ぼすのかわからないため、そのような芽を摘んでおく必要があります。

その為には死角をそのままにしていてはいけないのです。

だから顕微鏡にはミラーテクニックが必要なのです。

細かいところに配慮する為に顕微鏡とミラーテクニックが必要なのです。

見ながら行う治療は歯科治療の基本だと強く感じていたので、ミラーテクニックを修得する為にマネキンで直向きに練習をしました。

「素直に愚直であれ」を胸に、ただただ練習を積みました。

クラウンの支台歯形成にはミラーテクニックのエッセンスが詰まっています。

私は上顎、下顎、右、左問わずほぼミラーテクニックで形成できます。

患者さんは50代男性、左上の小臼歯のクラウンの治療です。
頬側近心の形成

口蓋側の形成

隣接面の形成

隣在歯の誤切削は全くありません。

印象

印象面

適合精度の高いジルコニアクラウン

治療費用:約20万円

ミラーテクニックの利点は死角を見る以外にもあります。

ミラーを動かすだけで死角を見ることができるので、自分は動きません。

いつも患者さんの頭の上、つまり12時の位置にいます。

自分が動かないので、アシスタントの作業もシンプルになります。

これは治療時間の短縮にも繋がり非常に合理的です。

さらに、感染症対策として使用するマイクロドレープにも非常にマッチします。

このドレープのお陰で切削による飛沫をかなり減少させることができます。

歯科業界では見えない歯科治療って驚くほど軽視されています。

今まで何の問題も起きてないのになんで?って考えている歯医者が多くいます。

根管治療では顕微鏡を使うことが当たり前になりつつあるようですが、以前では、根尖が見えないのに意味ないじゃん、って考えている歯医者がたくさんいました。

ところが、現在ではそんなこと言う歯医者は少なくとも私の周りではだいぶ減りました。

これと同じことが虫歯治療、歯周病治療、親知らず抜歯、クラウン・ブリッジにも言えるのではないでしょうか。

人は知っていること以上のことは知らない、という至極当たり前のことなのでしょう。
見える治療の大切さに早く気がついて欲しいです。

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔