歯を失う原因の割合が42%で堂々第一位の病気は歯周病です。
歯周病という言葉は聞いたことがあると思いますが、どのような病気なのか正しく知る人は少ないと思います。当院での顕微鏡による歯周病治療(マイクロぺリオ)についてご紹介します。

口の中には約700種類ほどの細菌が生息しており、その中のせいぜい半分ほどくらいしか名前がついていません。

ソクランスキー(Socransky)という人が、歯肉縁下のプラークを構成する菌種を6つのグループに分類しました。
レッドコンプレックス、オレンジコンプレックス、ブルーコンプレックス、パープルコンプレックス、グリーンコンプレックス、イエローコンプレックスとまるで秘密戦隊ゴレンジャーのような分類名称です。

それぞれの菌が複雑に影響し合い、どれか一つの菌をやっつければ歯周病が治るというものではありません。

実際の治療で、歯周病かどうかの判別法の一つに歯周ポケットを計測します。

歯周病が進行すると歯周ポケットと呼ばれる溝が深くなる傾向があり、この数値が高くなるほど歯周病の進行が進んでいるという目安になります。

歯周病は遺伝というより、生活習慣病と言われています。
よく、親も歯が弱いので私も遺伝で歯が弱いんですという患者さんがいますが、家族だと食生活も似ているしあまり歯の健康に関心がない家族なら歯磨きもおろそかになりがちになるので、親子で似た口腔環境になるのでしょう。

歯周ポケット内に存在するLPS(リポポリサッカライド)と言われる菌体成分は、免疫細胞や歯肉線維芽細胞を刺激し、サイトカインというものを放出させます。

これらの物質に破骨細胞が応答し、歯周病菌から遠ざかるために骨を吸収し距離を置こうとします。いわば鬼ごっこのようなことをし、その終焉は抜歯となります。

よく歯周病菌が骨を食べるイラストが使われることがありますが、骨を壊すのは自分の細胞が壊すのです。
下の写真は歯周病末期の歯です

根の先端近くまで歯石がびっちり付着しています。
もっと早く来院していれば助けられたのかもしれません。

歯周病の治療としてはできるだけ細菌を減らすことに力を注ぎます。
歯周病治療においても顕微鏡は威力を発揮します。

まずプローブで歯肉の状態を探り、出血の有無やポケットの深さを測ります。

一本ずつ全周チェックし、歯肉縁下に歯石がついていたら超音波スケーラーやキュレットでこれを除去します。

一番奥の歯の奥の面はなかなかお手入れし難いところですので、私達が綺麗に掃除した後自分自身でお手入れができるように歯ブラシの使い方や補助用具の使い方を練習します。

下の前歯の裏側は縁上歯石がつきやすく、裏側なので見にくいところですがミラーテクニックだと楽に除去できます。

奥歯の縁下歯石でもミラーテクニックを駆使し見つけ出し、これを確実に除去します。

歯石は軽石のようなものなので、歯周病菌が住み着く空間があるためそこが基地になってしまうので取り除く必要があります。

歯肉は口の中の皮膚なので細菌の侵入を防ぐバリヤーの役割をしていますが、ポケット内の歯肉に潰瘍ができてしまうと血管が露出してしまいます。

血管が露出してしまうと体内に細菌の侵入を許してしまうので、だから歯肉からの出血があると良くないのです。
ポケットが浅くても出血がある方が状態は良くないし、多少ポケットが深くても歯肉からの出血がなければ良し、と判断することもあります。

この写真のように歯肉縁下に大きな歯石があると歯石が細菌の供給基地となり、何もしないでいると根の先端付近まで細菌の侵入を許してしまい抜歯になってしまいます。

顕微鏡では可能な限り取りこぼしがないように取り除くことができます。
それは「見ながら」治療できるからです。

それでも深くなりすぎた歯周ポケットでは、外科的なアプローチが必要な時もあります。

歯周病の予防法の一つで大事なことは、プラークコントロールです。
歯の治療をして詰めたり被せたりした修復物がブラッシングの邪魔をし、プラークコントロールを著しく低下させることがあります。

この歯は前装冠が外れたのですが、適合は全くよくないクラウンでした。
患者さん自身のブラッシングも不十分なのですが、このようにブラッシングの邪魔をしている不良補綴物をたくさん見てきました。

本気で歯周病を治すのなら、不良補綴物や修復物は除去し適合の良いものにした方が良いです。
ですから当院の顕微鏡歯周病治療の治療費は、何をどこまで行うかによって随分と幅ができてしまうので、家電を買うようにお客さんがどこの誰でもこの値段というわけではありません。

クラウンが脱離した患者さんは全体的な治療をしていくご希望だったので、まずは徹底的な非外科的な歯周治療を進め一つ一つのステップを確認しながら治療を現在行なっています。

歯周病治療は患者さん、歯科医師、歯科衛生士の力を合わせないと克服困難です。

一度歯周病が進んだ患者さんは、例え状態が良くなっても再発の可能性はあるので歯科医院との付き合いは長くなります。

来院が途絶えることが一番歯を失うリスクを高めてしますので挫けないでください!
私達も単調にならないよう工夫しなければいけませんね。

顕微鏡は即座にご自身の口腔内の状態を見ることができるので、モチベーションを保ち続けやすいです。

歯周病は糖尿病のように、発症したら一生付き合わなければいけない病気です。
自己管理がとても大切になります。

もし貴方が歯周病を治したいと強く希望するのであれば、私達はとことんお付き合いする用意をしております。

顕微鏡歯周治療 
治療期間 患者さんによって治療期間は異なりますが、メインテナンスは長期間続きます。
費用 歯周基本治療 150000円〜 外科処置等は別途

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔