根管治療の成功の基準は、治療後4〜5年の間に咬合痛などの自覚症状がなく、X線写真上で透過像が無いことと言われています。
成功率はイニシャルトリートメント(1回目の根管治療。主に抜髄が多い)で約90%。
病変があるイニシャルトリートメントで約80%。
リトリートメント(根管治療の再治療)で約70%といわれています。
この成功率は、海外の報告であって、日本の保険の根管治療の成功率は50%にも満たないと言われています。
今回は9年前に根管治療した経過と、新たに根管治療を始める歯について記述します。

移転してから早いもので1ヶ月半が過ぎました。 やっぱり、綺麗で広いところで診療ができるって気持ちいいですね。
移転して本当に良かったと実感しています。
これも数ある歯科医院の中から当院に来てくださっている皆さんのおかげです。

患者さんにも綺麗で快適な歯科医院になるように更に頑張ります!

患者さん皆さんにとって気持ちのよい歯科医院にしたいのですが、
特に男性にお願いがあります。
トイレを使用する時は小でも大でも必ず座って使用してください!
立ってオシッコすると衛生上非常に汚いのです。
守ってくれなきゃ女性専用トイレにしちゃいますからねっ!

さて、移転直前に前歯の具合がおかしいということで来院された患者さん。
実に数年ぶりにいらした患者さんでした。
今回具合が悪い歯は、すでに根管治療済みの差し歯が装着されている歯で、歯茎を押すと痛みがあり、何もしなくても違和感があり、9年前のような症状に近いので、とても悪い予感がするとのことでした。

実はこの患者さんは9年ほど前に、他院で根管治療中の左上の前歯の具合がとても悪く、おもて歯科医院に来院されました。

その当時は痛みで、心身ともに疲れ果てていたことを覚えています。

治療後9年経った現在は何も違和感もなく快適だそうです。

しかし、一つとても心配なことがあります。
根管治療が終わった後、患者さんは事情によって実家に帰られました。

近くの歯医者で差し歯を入れたのですが、案の定適合が全く良くないんです。

根管治療の予後不良はコロナルリーケージとも言われています。
つまり、差し歯などの適合が悪いと端っこから漏洩が起こり、根管内が感染してしまいます。
コアまでは私が築造したのですが、最後の補綴物がとても残念です。

それはさておき9年前の記録を見ると、顕微鏡根管治療を行った直後から、あれほど苦しかった痛みがとれてとてもお喜びになっていたとの記載がありました。

当院の顕微鏡治療は、すべてノーカットで治療内容を動画で記録しているので、9年前の動画を確認しました。
行っているコンセプトは現在とほぼ同じですが、私自身9年前と比べれば経験値も技術も向上しているのだと思っています。
手前味噌ですが。

でも9年前の治療動画を見返して見ると、その当時も今と変わらぬ一生懸命さが動画に溢れていました。

毎日の積み重ねで普段は実感することは無いのですが、顕微鏡治療を始めてからずーっとひたむきに、真摯に治療に取り組んでいたんだなあと自分で自分を褒めちゃいました。

治療の記録は私の財産です。

今回はうまくいったケースですが、上手くいかなかったケースでは、何が原因だったのかを検証することができます。

これは臨床家であればとても貴重な記録になります。

生涯現役を目指す私にとって、技術向上は一生のテーマなので、自分の治療記録は私にとって大事な宝物です。

今回の具合の悪い歯は右上の前歯です。

治療開始は移転後の新しい診療室で行いました。

術前のレントゲン写真

CT

CTはリトリートメントであれば、私は撮影したほうが患者さんの利益につながると考えています。

前医が一生懸命根管治療したにもかかわらず、結果が思わしくないわけですから、何か原因が隠れているのだと思います。
それと、前医の治療技術や知識がどれほどかわからないのですが、レントゲン写真で根管充填材が根の先まで詰めている再治療ほど、内部が壊されている可能性が高いからです。

何故か保険治療の根管治療は、根管充填材をどこまで詰めているかで根の治療が上手いとか下手とかの基準にしているので、前医が知識もないのに一生懸命グリグリやった後の再治療は厄介です。

CTの撮影場所が前歯だったので、9年前に治療した歯も写っていました。

根管治療の最初の一歩は9年前も現在も変わらず、まずは上部の感染の除去と隔壁の設置です。

差し歯の除去

9年前の映像
来院された時は、仮歯というよりも、両脇の歯に貝殻のような歯をボンドでとめてありました。

土台の除去

感染の除去

9年前の映像
当然の如く、隔壁などはされていませんでした。

差し歯のマージン(接合部)は歯肉の深いところに設定されていました。

私はこんなに深く設定はしていません。
この辺は歯科医師によって考え方が異なります。

内部を観察すると、多分コア(土台)形成の時方向を誤ってしまい唇側をずいぶん削除した形跡がありました。
手探り治療の典型ですね。
パーフォレーションしていなくて良かったです。

隔壁

9年前の映像
隔壁の設置

根管充填材の除去

9年前の歯は来院時には根管充填材はない状態でした。

大なり小なり根の先端付近は湾曲しています。
やはりこの歯もレッジが形成されていましたので、レッジの除去をおこないました。

器具にプレカーブ(予め根の湾曲に合わせて曲げておくこと)をつけて、内湾を意識して次亜塩素酸ナトリウム化でファイリングします。

9年前の映像
この歯も湾曲していて、レッジが形成されていました。

洗浄は現代の根管治療にとって一番重要なステップです。
現在様々なコンセプトに基づく洗浄法があります。
レーザーを応用した根管洗浄法もありますし、開発中の方法もあるので、どの方法が良いのか煮詰まったところで順次バージョンアップしていくので常に情報のアップデートをしています。
現在は超音波による方法を採用しています。
これは9年前と同じものです。
現在

9年前の映像

情報のアップデートはしているのですが、これといって明らかに効果が違うと言い切れるものがまだありません。
レーザーを応用するものはいいかなあ、と思いますが、機器がとても高額になるため、治療費の値上げなどを考慮すると、まだそこまでして導入するには、もう少し効果の結果を待つとしましょうというのが当院の現状です。

その後、MTAセメントで根管充填します。

根管充填後レントゲン写真

MTAセメントは硬化するととても硬くなるので、この後の再治療はありませんという前提になります。
この後不具合を起こしたら外科処置に移行します。
と、いっても、MTAセメントで根管充填してもリトリートメントできないわけではないです。

この辺は歯科医師によって様々なのだと思います。

根管治療後、以前まであった不快症状は消失しました。

治療回数4回
治療費 再診料、CT、根管治療費 計約15万円

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔