顕微鏡が日本の歯科医療に登場してから約20年ほど経ちます。
顕微鏡は何のために使うのでしょうか。
そろそろ顕微鏡の普及率を上げる取り組みだけではなく、本質についても議論する段階に入ったのではないでしょうか。

きちんとした歯科治療を受けたいと考えている患者さんは、顕微鏡歯科治療というものに辿り着く人も多いことでしょう。

あなたが辿り着いた顕微鏡を使用している歯科医院のホームページにはどのような事を謳っていますか?

「当院は精密治療を行なっています」
「当院は最先端治療を取り入れています」
「当院では保険でも顕微鏡治療を行なっています」

など魅力的な言葉が並んでいるホームページがほとんどです。

多彩な言葉が並んでいますが、集約すれば、今まで肉眼で見えなかったものが「見える」ことにより治療の質が上がるんだよ、という事を主張しているのだと思います。

その事に一点の反論もありませんし、その通りだと思います。

しかし歯科治療には肉眼であろうが顕微鏡を使おうが見えないところがあります。
死角です。

あなたが辿り着いた歯科医院のホームページに死角で見えない部分の治療法を記載しているところはありますか?

私が知る限りほとんどありません。

多くの歯科医師は見えることの素晴らしさをを知っているはずなのに、死角に対しては沈黙です。

何故なのか。

その答えは、死角を見ながら治療する方法は難しいからです。

現在のところ口腔内の死角を見るには。
①口腔内カメラ
②内視鏡
③ミラー
以外ありません。
顕微鏡と組み合わせるのならミラーテクニックになります。

ミラーテクニックは難しいですが練習をすれば必ずできます。

顕微鏡治療を求めている患者さんは「顕微鏡」+「ミラーテクニック」で検索してみてください。

検索結果では多くの歯医者さんではミラーテクニックを否定しています。

理由の多くは左手が使えないからなのだと。

私からしてみたら左手にミラーを持つだけで、死角を見ながら治療できるので精度が上がりミラーテクニックには利点の方が多いと考えています。

左手が使えても死角が見えずに盲目的な治療をするのならデメリットしかありません。

多くの歯科医師が見えることの素晴らしさを主張しているのに矛盾していませんか?

歯科治療はうまくいっていなかったとしてもすぐには症状が出ないことが多いです。

見逃された問題点があったとしても数年経たないと症状として現れないことも多数あります。

だから、死角部分の手探り治療はなんとかしなければいけないのです。

故野村監督の言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものがあります。

見逃しがあったとしても何事もなく経過することもあるでしょう。
でも治療した歯に問題が出た場合、間違いなく理由があります。
それは、大事な何かを見落としている事かもしれません。

少なくとも私はそう考えます。

100%自分の力を出したとしても治療成功率を100%にする事はできません。
それなのに死角部分を手探り治療するなんて私には考えられません。

だから私はミラーテクニックの練習をたくさん行なって修得しました。
歯科医師としての義務を果たすために。

歯科医療の大部分は一般的な治療で占められています。

虫歯の治療、歯周病の治療、根の治療、抜歯、クラウンなど。

顕微鏡治療は先進的なものというより、基本的な事を当たり前に行うための道具であって、それを果たすためには見えなくてはいけません。

顕微鏡治療という括りでも、その使用法や考え方は多岐に渡ります。

顕微鏡治療に辿り着く患者さんはきっと歯で苦労している人だと思います。

顕微鏡を持っている歯科医院と持ってない歯科医院という分類から、ミラーテクニックができる歯科医院とミラーテクニックができない歯科医院という分類も場合によっては必要なのかもしれません。

とても大事なミラーテクニックなのに教えられる歯科医師が少ないため、なかなかミラーテクニックを習得する機会を得られない歯科医師も多いかと思います。

2年前から日本顕微鏡歯科学会会長の三橋純先生を師範として、歯科医師向けに顕微鏡ミラーテクニック道場を開催しています。

現在11回開催され参加された歯科医師は100名を超えます。
受講後でも練習を重ねてその上達ぶりを報告してくれる歯科医師もいらっしゃいます。

受講生の先生方からよく聞かれるのですが、私は三橋先生の医院に勤めたことはありません。
二人の師範代は以前三橋先生の医院の勤務医でした。

三橋先生と出会ったときは、私はすでに開業していたのです。

セミナーも受講しました、受講後練習も沢山しました、たまに見せてもらう動画を食い入るように見て完コピを目指しました。
歯科治療にミラーテクニックは必須だと考えていたので、努力とかそういうものに苦痛を感じませんでした。

まだ透き通る世界が見えるほどの至高の領域にはたどり着いていませんが、いつも心を燃やして取り組んでいます。

受講生の先生方は全員私と同じ境遇です。

診療室に模範となる師範はいません。
でも大丈夫です。
私が立証しました。
三橋先生の勤務医でなくてもミラーテクニックができることを。

地道ですがコツコツと活動を重ねて、顕微鏡にミラーテクニックを使うことが当たり前のような歯科医療を築いていきたいと思います。