ネットで「顕微鏡歯科治療」と検索するとたくさんの歯科医院がヒットします。
当院では保険でも最先端の顕微鏡治療を行っていますとか、保険・自費治療に関係なく顕微鏡治療を行っていますとか、 顕微鏡治療は自由診療になりますとか。
これでは患者さんはわけがわからなくなりますよね?
保険で顕微鏡治療をやってくれる歯医者は良心的と思ってしまう人も多いのではないでしょうか。
今回はこの件について私の考えを紹介します。

顕微鏡治療は保険には使えないの?  

正解は、、、、使っても使わなくてもどっちでもいいのです!

もっと正確に言うと、「顕微鏡を使うから自由診療です。」というのはルール違反です。

では、どうして保険でもやる歯医者と自由診療に顕微鏡を使う歯科医師がいるのでしょうか。

それは歯科医師の数だけ考え方があるからと、日本人の歯に対する価値観からだと考えています。

私がかつて勤務した歯科医院は地域で一番の人気の歯医者でした。

自費治療を勧めると評判が悪くなるということから98%くらい保険診療でした。

自費を勧めず保険治療を行っていたので、患者さんからは良心的な歯医者さんという認識があったようです。
その内情は  1時間に歯医者一人あたり5~6人くらいの患者さんを治療していました。
そこに技術力というものはあまり必要ありませんでした。
野戦病院のように次から次へと患者さんが待っています。 
予約制でしたが約束どおりの時間に始まったためしがありませんでした。
多くの患者さんがイライラしていました。
何度も何度も繰り返される再治療が多数でした。

でも、保険治療しかしないので良心的な歯医者と認識されていました。

ちなみにそこの院長はひと月のレセプト件数が750枚あることを、アルバイトの私達に自慢していました。
レセプトとは患者さんの料金伝票のようなもので、1枚あたり平均12,000円なのでそこの歯科医院のひと月の売上は約900万円です。
勝ち組です。

私はそこのアルバイト先で学んだことは、歯医者が経済的な成功を得るにはこの先生のスタイルを真似すればいいんだな、ことくらいでした。

私が常々苦々しく感じているのは、このような考えの歯医者が他の歯医者との差別化のために、使えもしない顕微鏡を購入だけして集患目的の 広告塔に顕微鏡が使われてしまっていることです。

勤務した他の歯医者もほぼ同じでした。
保険診療は昭和30年代からの虫歯の洪水時代から「方針」はほとんど変わっておらず、短時間でより多くの患者さんの治療をすることが目的です。
高い技術力を発揮するための時間は確保できないことが多く、予算もぐっと抑えられています。
それでも安価で誰でも受けられる世界でも類を見ないすばらしい制度です。本心からそう思います。

一方、その時代から自由診療で治療していた歯科医師もいます。

自由診療ですから費用も目的も全てがその先生の考えているようにできます。
国の制約はほとんどありません。

きちんとした考え、技術があれば顕微鏡がない時代にもかかわらず、長年月に渡って歯が長持ちしている報告がたくさんあります。

私はこのようなしっかりとした技術、知識、考え方の自由診療で、歯をさらに長持ちさせるために「顕微鏡(マイクロスコープ)」が必要になったのです。

そのために知識の習得と技術の研鑽に励みましたし、現在も進行形です。

保険治療費は日本国が決めた公定価格です。
これは日本全国どこで受診しても治療費は同じということです。

保険で治療するということは、野戦病院のような歯医者と高い技術を持った歯科医師が治療した治療費は全く同じということです。

それで医院の経営ができればよいのでしょうが、それができないからややこしくなるのです。

ここで2種類の人種に分かれるのです。

経済的な成功を求める歯医者と、歯科医療を追求していく歯科医師とに。

当然後者は保険治療では歯科医院が潰れてしまうので、自由診療を提案することが多くなります。

日本人には

保険治療=良心的な歯医者
自由診療=ぼったくり
という考えを持っている人はかなり多いので、良心的な歯医者さんを演じるほうが全てが丸くいきます。

自由診療を提案するのは茨の道です。

私は決して保険を否定しているわけではありません。

ただ、保険は国の定める指針に忠実に従わなければいけないので、私の考えなど入る余地はまったくありません。

どんな治療にも利点・欠点があります。 

以前から一貫して皆様にお伝えしていることは、 医療なので選択肢を提示することは義務だと考えています。

ご自身が全てを知った上で選んで頂き、私達は全力でその選択した治療に取り組みます。

ただそれだけです。

なぜおもて歯科医院では自由診療の他に保険治療も行っているのか。

前提として保険で顕微鏡治療をしているのではありません。
ごく普通の日本の歯医者さんの治療です。
顕微鏡は説明用として活用しています。

自由診療は院長の私が担当で、保険治療は勤務医が担当です。

日本には50年に渡る国民皆保険が根付いているので歯科治療は保険が当たり前という土壌が出来上がっています。

その治療の質について歯医者からほとんど情報を提供されなかったため、自由診療についての治療の質との違いをほとんど知らされていないまま現在に至りました。

一方、国民健康保険は年収に応じて年間数十万円の保険料を支払っています。

まず、患者さんに対してきちんとしたフェアな情報がきちんと知れ渡っていないので情報を得るための機会が必要だということ。

年間国民健康保険料を支払っているのだからその恩恵を受けてもいいじゃないのかという個人的な思い。

もちろん混合診療に抵触しない範囲での話。

どちらかを選べるという選択の自由があっても良いのではないかと思うのでこれからもこの形態でやって行く予定です。

もちろん経営的にも自由診療一本では不安定になるし、潰れてしまえば自分の理想も何もなくなってしまうので、多分生涯この形態をとっていきます。

おもて歯科医院と関わることで、常にフェアな情報を提供し、常に選択の機会の扉を開いておきたいと思っています。

考え方は歯科医師の数だけあるのです。

同様に、患者さんの数だけ要望も多様です。

ただ、ご自身の要望の前に、圧倒的に歯科治療に対する情報が不足しています。

地域の患者さんがおもて歯科医院と関わることで、なにかお役に立てることは必ずあるはずだと思っています。 

最後に今回の表題に対しての私の考えは、

高い技術で顕微鏡治療をしている歯科医師はほぼ自由診療でおこなっています。

保険で最高の治療をしていますというのを売りにしている歯医者には注意が必要です。

実はこのブログの内容は何年も前に旧歯記に載せていたものでした。

それを加筆修正しています。

本当はこのブログはお蔵入りしようと思っていたのですが、

先日他院で根管治療している患者さんが来院しました。

お口の中を見せてもらったら、まあ、日本では標準的な保険治療だなあ、という感想でした。

私は現在の保険治療の限界を痛感しているので前医の治療を否定しません。

でも、しかしですね、その歯医者のホームページを見たら、なんか、こう、ひとこと言いたくなってしまって。

いいですか、皆さん。

広告宣伝を鵜呑みにしないでくださいね!

安いことだけが良心的ではないことを覚えておいてくださいね!

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔