2019
8/31
顕微鏡で親知らずを抜歯する利点
- 2019.08.31
- ブログ歯記
- 痛くない腫れない怖くない・ 親知らず・ 顕微鏡歯科治療(マイクロスコープ)
今まで見えなかったものが見える。
不可能が可能になる。
顕微鏡の効果は根管治療だけにとどまりません。
顕微鏡を使いこなせる歯科医師は一般的な歯科治療にも効果的に使うことができます。
今回は顕微鏡を最大限活用し、なるべく痛まない・腫れない親知らずの抜歯を紹介します。
患者さんは30代女性。
今までいくつかの歯科医院を受診したが、なんとなく嫌で通院しなくなったという経験をお持ちの患者さんです。
当院の特徴は視覚による説明です。
顕微鏡で診査して現状を説明し、治療法と費用の説明をします。
保険の治療と自由診療の顕微鏡治療の内容と費用を提示して、患者さんに選択してもらっています。
顕微鏡治療についてよく調べてお見えになる患者さんは、費用のことを説明しても建設的な話し合いになるのですが、初めて顕微鏡治療のことを聞く患者さんはそうはいきません。
患者さんには、自由診療にはなるが、顕微鏡治療の説明をした方が良いのか、の確認をしてから説明を行っています。
当院では、日本の平均的な保険治療も行っていますし、高度な自由診療での顕微鏡治療も積極的に行なっています。
当院の患者さんにはどちらを選ぶかの選択肢があります。
でも、現状を説明し、費用を説明すると、次から来なくなってしまいます笑。
ごく一般的な保険治療をしているにもかかわらず、違う歯科医院に行ってしまうようです。
当院のように、顕微鏡治療の説明を聞いた後では、保険治療では手を抜かれてしまうというイメージがあるのですかね?
世の中は、客観的に、なるべく正確に正直に説明されることをあまり好まないことを学習しました。
今回の患者さんは、多分当院のやり方がご自分の考え方と合致したのでしょうね。
お口の現状を説明した上で右下親知らずの抜歯を行うことになりました。
完全に歯肉の中に埋まっていますが、骨からは出ています。
完全に骨に埋まっているのなら、無菌的に保たれますが、歯肉だけの封鎖だと弱く、細菌感染を起こしてしまう可能があります。
私達は必ず歳をとります。
高齢になった時この親知らずを抜歯することになれば、かなりの負担になります。
気づかないうちに隣の歯に虫歯を作ってしまう危険性もあります。
このような親知らずであればなるべく若く元気なうちに、症状が出てないうちに抜歯をしておいた方が良いと、私は考えています。
横に生えている親知らずは分割する必要があります。
歯を分割するには歯肉の切開が必要です。
切開を大きくし剥離量を増やすほど、術者が患部を見易くなりますが、患者さんは術後の痛みや腫れが強くなります。
また、親知らずの下の方には太い血管・神経が走行していますし、舌側にも注意しなければいけない神経・血管があります。
これらのことは、「術者が患部が見えれば」安全に、痛みや腫れが少なく親知らずの抜歯ができると思いませんか?
そうなんです。
顕微鏡を使える歯科医師なら、口腔外科の専門医でなくても安全に、痛みや腫れが少なく親知らずを抜歯することができます。
逆に、顕微鏡を使わないで親知らずを抜歯できる口腔外科の専門医は凄いです。
高い技術を持った口腔外科のエキスパートは、顕微鏡を使わなくても低侵襲で抜歯できます。
埋伏している親知らずは事前にCTを撮影して術式をシュミレーションします。
解剖学的に注意をしなくてはいけないところを十分に頭に入れて、親知らずを分割する場所、歯根の形などを詳細に画像で調べて、抜歯手術のイメージをします。
切開は最小限にします
剥離する範囲も最小限にします。
これは顕微鏡でミラーテクニックを使うことができるので、剥離量を減らすことができます。
手術時間と安全性のバランスで剥離量は変わるのだと思いますが、術者の技量が大きく影響するでしょう。
歯冠分割
小さく剥離した隙間から、「見ながら」歯冠を分割して骨をなるべく削らずに親知らずを分割して取り出します。
だから患者さんに負担の少ない親知らず抜歯が可能なのです。
歯冠部を分割して取り除いた後は歯根部を取り除きます。
脱臼させた後、引っ掛かって取り出せない場合はさらに歯根を分割してから取り出します。
縫合をしたら終了。
手術時間約50分。
当院では術後の消毒は特に行いません。
生理食塩水で軽く洗浄するくらいです。
これは夏井先生の「傷は絶対消毒するな」を読むと参考になります。
術後の腫れと痛みはほとんど無かったようです。
口腔外科のエキスパートには全く敵わないですが、一般的な埋伏智歯なら、顕微鏡を駆使して低侵襲な抜歯は可能です。
親知らず抜歯は保険の項目にあります。
初診、レントゲン写真、CT、埋伏智歯抜歯を合計すると約3,500点、治療費にすると約35,000円。
3割負担とすると、皆さんは約1万円ちょっとで埋伏智歯を抜くことができます。
保険治療は、1ヶ月の患者さん一人当たりの平均点数が、所在する県の平均の1.2倍になると国から出頭を命じられます。
千葉県の平均は1,200点なので、1,400点を超えると出頭させられるリストに入ります。
当院はなぜか患者さんの数が少ないので、どうしても平均点数が多くなりがちになってしまいます。
実は昨年集団的指導を受けました。
これは平均点が千葉県の平均点より高いから注意しろよ、という警告です。
もしこのこのまま平均点が高いままだと、出頭して尋問を受けます。
何日も休診して。
自殺した歯医者さんもいるそうです。
埋伏智歯抜歯は3,500点くらいかかるので、当院では平均点が物凄く跳ね上がってしまいます。
今まではどうにかやってきましたが、もう限界です。
ですから、当院では保険で埋伏智歯抜歯はもう不可能です。
もし、顕微鏡による埋伏智歯抜歯の利点に魅力を感じてくださる患者さんがおられましたら、当院規定の自由診療での埋伏智歯抜歯をお申し出ください。
自由診療での顕微鏡埋伏智歯抜歯の治療費はおおよそ5万円ほどになります(初診・再診料、画像診断別)。
保険での埋伏智歯抜歯は歯科大学病院へ照会いたします。
保険治療はとても助かる制度ですが、国民全員がルールを守らないといけません。
保険治療にはこのような規定があるということをご理解いただれば幸いです。
関連記事
顕微鏡親知らず抜歯〜可及的に痛まない腫れないために〜
根っこの曲がった親知らず
おもて歯科医院
歯学博士
表 茂稔