当院の徹底した院内感染対策

当院は、ご来院いただくすべての患者さんに安心して歯科治療をうけていただくため、開業当初から徹底的に衛生的な診療環境の構築に取り組んできました。

現在、新型コロナウィルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が発出されていますが、おもて歯科医院では、開業当時から厳格な衛生管理の元、診療を行っておりますので、これまでどおり、粛々と衛生的診療環境の維持につとめるのみと考えています。

それでは、今回のブログ記事では、当院における衛生面での取り組みを細かくご紹介したいと思います。ぜひご覧いただき、安心して当院にご来院いただければと思います。

クラスBオートクレーブを導入しています

感染症対策において、歯科領域で注目しなければならない感染経路には

1. 接触感染
2. 飛沫感染
3. 空気感染

の3つがあります。

まずは、1の接触感染対策から説明していきます。

おもて歯科医院では、開業当初から(13年前から)、クラスBオートクレーブとウォッシャディスインフェクターを導入しております。

クラスBオートクレーブというのは、医療用オートクレーブとして最高品質のもので、ヨーロッパ規格EN13060に定められた要件のクラスBに準拠した卓上高圧蒸気滅菌器です。

ヨーロッパ規格EN13060では、小型高圧蒸気滅菌器の性能要件とそれに付随するテスト方法が規定されており、これらは医科、歯科、獣医科などで幅広く使われています。実際の医療現場で使う、血液や体液と接触する可能性のある材料や器具には様々な形状のものがあり、それぞれの形状に適した滅菌サイクルで滅菌する必要があります。

そこで、ヨーロッパ規格EN13060は、その能力別にクラスB、クラスS、クラスNという3種類の滅菌サイクルにクラス分けしており、その中でも、全ての形状の被滅菌物を滅菌できるとされているのが、唯一、クラスBサイクルとしています。このクラスBサイクルに準拠したのオートクレーブを、当院では開業当初から使用しております。(参考:オートクレーブ Lisa

開業したての頃は、同業者(同じ歯科医師)にクラスBオートクレーブの必要性を熱弁しても、全く通じないくらい、わたしは時代を先取りしていました。(笑)ここ数年の間に、だいぶ、その必要性が理解されてきたようです。現在では多くの歯科医院で取り入れはじめています。

治療中は手袋で物を触りません

もう一つ、接触感染対策で重要なことをご説明いたします。

歯科医師は歯の治療時に、患者さんの口腔内に手を入れて治療します。

たとえ使い捨てのゴム手袋をしていたとしても、その指先には唾液や血液がついている事があります。その指先で、器具を取るために引き出しを開けたり、瓶の蓋を外したら、患者さんはどうお感じになるでしょうか?

もし、万が一、ある患者さんが、なんらかの感染症にかかっていたとしたら、その方の体液が歯科医師の指先を介して、引き出しや瓶の蓋などを汚染してしまいます。そして、物から物へと感染症が伝搬する可能性があります。まさに、今、世界中で起こっている新型コロナウィルス感染症拡大の縮図ですね。

医療従事者として、院内感染対策が不十分であったばっかりに細菌やウィルスを伝播してしまったら、悔やんでも悔やみきれません。

そこで、おもて歯科医院では、上記のような『物⇔物感染』を回避するために、(開業当初から)歯科医師は治療の途中では、決して引き出しをあけたり瓶の蓋を外したりしないことになっています。これらは全てアシスタントが行うことになっています。

どうしても人手が足りない場合は、必ず手袋を外して器具を取り出すこととしています。

医療器具は患者さんごとに取り替えます

また、当院の治療台(診療ユニット)のテーブルには、薬の瓶や歯を削るドリル、根の治療に使うファイルなどは一切置いていません。

スプレーするシリンジなども、取っ手ごと丸ごと患者さんごとに交換しています。つまり、歯科医師が触れるものは全て、患者さんごとに交換しているのです。

ただし、これらは自由診療だからできる事かもしれません。

保険治療で、なかなかここまで対応できる歯科医院は無いと思います。保険治療と自由診療では、桁が違うほど金額差があるのですが、これら患者さんから頂く治療費は、安全に治療をうけていただくための衛生面の配慮に費用をあてているのだとお考えください。

とにかく歯科治療器具は高価です。

滅菌機器、ディスポーザブル品など、多くの高価な医療器具を用意しなければなりません。上記のクラスBのオートクレーブやウォッシャーなどは特に高額な医療機器です。

しかし、患者さんの安全性を担保するためには、患者さんごとに器具をとりかえたり、こまめに衛生用品をとりかえたりと、やるべきことは沢山あります。しかし、その分費用がかかってしまいますので、やはり安全で良質な歯科治療をうけるためには、わたしは自由診療にて歯科治療を提供するしか道はないと考えています。

ですから、質が高く安全で安心できる歯科治療をお望みの患者さんは、保険治療ではなく自由診療をお選びいただきたいと思っています。

うがいを禁止しています

あともう一つ、2020年に苦しめられた新型コロナウィルス感染症拡大の混乱で考え直した事がありますのでご紹介いたします。それが、うがい(含嗽)の禁止です。

血液や唾液には、病原性の細菌やウィルスが潜んでいる事があります。頭の中ではわかっていた事ではありますが、私はこれまで普通に患者さんにうがいをしていただいておりました。

しかし、今回の新型コロナウィルス感染拡大で目が覚めました。

おもて歯科医院内ではうがいを禁止することと致しました。うがいをすれば吐き出します。すると、うがい時に吐き出した水しぶきが、その周辺に散らばります。散らばった水は、ほとんど目には見えない小さな飛沫となって散乱します。これらは、患者さんへのリスクのみならず、当院で働くスタッフ(医療従事者)をも危険にさらすと考えましたので、結果、うがい禁止を決断しました。

さらに、院内では、患者さんはご自身の指を口の中に入れることもご遠慮頂いています。
まれに、患者さんに『どこが痛いですか?』と質問すると、ご自身の指を口の中に入れながら教えてくださる患者さんがいらっしゃいます。(割と多いです)

しかし、一度ご自身のお口の中に指を入れた手で、その患者さんがドアノブなどを触れば、次にドアノブを触った人の手が汚染されます。患者さんの手を通して院内感染が拡大するリスクを極力ゼロにしていく事を決断し、上記のことをお願いすることとしています。

マイクロドレープで飛沫対策をしています

当院における新型コロナウィルス感染症対策として、かならず説明しなければならない大事な事が、もう一つあります。マイクロドレープです。

例えば、1の接触感染を防ぐためには、患者さんごとに器具を交換したり、スリーブやドレープで歯科医師が手を触れる部分を交換することで、かなり感染拡大を予防することが可能です。歯科医師ではなく、アシスタントに器具を出しして貰う事になるため人件費がかかりますが、重要なことなので外すことができません。

しかし、2の飛沫感染対策については弱点だったように思います。

歯を削る、歯石を取るなど、歯科治療時の一連の行為の過程では、沢山の飛沫が飛び散ります。このことを改めて見つめ直し、今回の新型コロナウィルス感染症拡大によって、考え方が大きく変化しました。この飛沫感染のリスクの低減に取り組まなければならないと考えました。

その取組みの一つが横浜の内田先生が考案し下高井戸の三橋純先生が改良したマイクロドレープです。

治療時に、手元と歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)をまるごと、ドレープで覆うことで、治療時の飛沫の拡散を最低限に抑えることが可能になります。ドレープの中に顕微鏡がありますので、視界がドレープによって遮られる事はありません。これは肉眼での治療の場合は実現できません。顕微鏡歯科治療だからこそ対応できる感染症対策です。

現在考えられる中で、最高だと思いませんか?
私は最高だと思います。

このマイクロドレープで、かなりの飛沫拡散を抑える事が可能です。クリニック内に飛沫が拡散しないので、クリニック内の空気が汚染されにくくなります。今まで、飛沫の曝露に晒されていた私たち歯科医療従事者にとっても、その安全・安心は飛躍的に高くなりました。

私たちが安全・安心なのですから、結果的に、多くの患者さんの安全・安心にも繋がるのです。

また、マイクロドレープに加えて、私の前面である腹部も保護するため、アンダードレープも装着して治療しています。アンダードレープは、患者さんの背中から頭の上を通りマイクロドレープの輪っかにクリップで留めています。

アンダードレープ(歯科用顕微鏡)

この状態だと、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)もマイクロドレープで覆われているので清潔さが保たれます。アシスタントの脚部の保護にもドレープを使用しています。

ドレープ(顕微鏡歯科治療)

以前は、口腔外バキュームも併用していましたが、バキュームホース内部の消毒ができないことと、排気に気掛かりな事があるので今では使用していません。何よりも音がうるさくて毎日使うと気が滅入ります。(笑)

飛沫対策はこれで一つ形になりました。今後も改良点があれば改善していきます。

高濃度オゾンで空気を清浄化しています

残るは、3の空気感染対策です。

新型コロナウィルス感染症は空気感染は起こらないと言われています。しかし、新型コロナウィルス感染症で問題になっている事の一つとしてエアロゾル感染があります。

エアロゾル感染とは、マイクロ飛沫が室内に漂い、それが感染を引き起こすとことです。飛沫はウィルスなどを核にして周囲は水分などで覆われています。そして、空気中を漂う微細な粒子になっています。飛沫として飛び散った後、水分は蒸発してウィルスなどが空気中を漂います。

おもて歯科医院の顕微鏡歯科治療は個室で行いますが、この部屋はつねにオゾンを発生させて、少しでも空気感染の可能性を低くするように務めています。この装置は低濃度のオゾン発生装置なので、健康上の心配はないと言われています。さらに診療終了後には、高濃度のオゾン発生装置を使用しクリニック全体の空気を清浄化しています。

ここまで読んでいただき、このような私たちの取り組みを大げさだと思う人もいるでしょう。

どうぞ勝手に笑ってください。(笑)

私は、この取り組みをおもて歯科医院の診療のスタンダードにしたいと考えています。

なぜなら、連日連夜、さまざまなメディアにより、新型コロナウィルス感染症の情報が発信され、人々の中には『感染リスクが高く、怖くて歯医者さんにいけない!』と考えている方が少なからずいらっしゃるのではないかと考えるからです。漠然とした不安は、人々の過度な恐怖心をかきたてます。『クリニック側が安全だ』と思っていても、人々の中には、なかなか信用できないと考えるのが普通ではないでしょうか?

だからこそ、大げさと言われても、一ミリの不安もなく患者さんに通ってきていただきたいので、当院ではこのスタイルをスタンダードにしていこうと思っています。

もちろん、私達の取り組みも100%安全ではありません。

しかし、これからも感染症対策をバージョンアップしながら、少しでも患者さんに安心して通っていただけるよう、自分たちの努力でできることは最大限行っていきたいと考えています。

執筆者情報

おもて歯科医院 表 茂稔

表 茂稔歯学博士/日本顕微鏡歯科学会認定指導医/顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔

〒279-0043 千葉県浦安市富士見1-11-29
TEL:047-354-8777

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