2020
3/20
大人になって初めて治療したのが顕微鏡根管治療
- 2020.03.20
- ブログ歯記
- MTAセメント・ マイクロエンド・ 顕微鏡歯科治療(マイクロスコープ)
痛みがなければついつい後回しにしてしまう歯科治療。
歯の治療は何十年ぶりという患者さんが、ほったらかしてきた今、しっかりときちんとした治療をしたいということで顕微鏡根管治療を開始しました。
患者さんは40代男性で歯科医院に受診するのは子供の頃以来でした。
歯が欠けたのは気づいていたけれど、痛みがなかったのでついつい受診するのが遅れたそうです。
何十年ぶりという事なので全体的なチェックをすると、無症状ではありますが何本か虫歯も見つかりましたし、歯石もたくさん付着しています。
患歯は左上5の第二小臼歯。
かなり虫歯が進行しています。
歯の治療は開始してみないとはっきりわからないことが多いので、術前にできるだけ予測できることと費用の説明をしています。
隔壁を設置するために虫歯を除去します。
虫歯をたくさん削っても、う蝕検知液で濃く染まる範囲はかなり広いです。
ある程度虫歯を除去した後隔壁を設置します。
もちろん接着面になる部分は完全に虫歯を除去しておきます。
今回はイニシャル(初回)の治療で根尖病変はないので成功率は高いことが期待できます。
イニシャルトリートメントの場合、ニッケルチタン(Ni-Ti)ファイルはHyflexを使用することが多いです。
このファイルは室温で超弾性ではなく形状記憶の性質を有し、スプリングバック(曲げた時に戻ろうとする反発力)のないファイルです。
湾曲した根管を追従しやすく、トランスポーテーションやレッジを起こしにくいものと考えられます。
痛みや違和感、根尖からの滲出液等の臨床症状がないことを確認し、次亜塩素酸ナトリウムで根管内を十分に洗浄したあと、根管充填を行います。
根尖部付近の観察
ピエゾフローで20分間次亜塩素酸ナトリウムで洗浄します。
ピエゾフローは細い針が超音波で振動し、先端から薬液が噴射されます。
現在洗浄法は多種多様なやり方があり、治療する歯科医師の考え方やによって選択されています。
根管充填剤はMTAセメントを使用しました。
MTAを選択した理由は、長期間カルシウムイオンが放出されること、強アルカリ製で殺菌力があること、生体親和性に優れ僅かな膨張があるため漏洩を防いでくれることなどがあるためです。
欠点は再治療の時除去するのが困難なことでしょうか。
MTAは操作性が悪いので根管充填操作に慣れていないとイニシャルトリートメントのような比較的細い根管を充填するのは難しいかもしれません。
根管充填後のレントゲン写真
根管充填後3ヶ月経過した現在順調に治療が進んでおり、クラウンの印象も終了しクラウンも完成しているので、このブログがアップされる頃はクラウンが装着されているかと思います。
患者さんの人生初の顕微鏡による根管治療とクラウンの治療でした。
患者さんは40代まで歯の健康を疎かにしていたことを後悔しており、これからはできるだけきちんとした治療とお手入れをしていきたいとおっしゃっていました。
私達はきちんとした治療をおこない、計画的なメインテナンスを行えば長期的に健康な口腔状態を維持できることを知っています。
おもて歯科医院では顕微鏡治療した歯が長期に渡って健康でいられるようにメインテナンスにも力をいれています。
治療したらその後は放置ではもったいないですよ。
根管治療費:約15万円
治療回数:3回
ちなみにこの後のクラウンの費用
ジルコニアクラウン:約20万円
メインテナンス:1回2万円
おもて歯科医院
歯学博士
表 茂稔