歯科治療の本質とは一体なんなのでしょうか。
答えはあるのでしょうか。
きっとその答えを探し求める旅は一生続くのでしょう。

患者さんは30代女性。
患歯は右上5、第二小臼歯の近心に虫歯がありました。

患者さんは当院に来る前は、保険で最先端顕微鏡治療をやっているという歯科医院に受診していました。
当院の顕微鏡治療は自由診療です。
今回の歯の治療前に根管治療も行っており、治療後には他の歯の根管治療をする予定です。
治療費はレジン修復で54,000円、根管治療で約170,000円です(税別)。
保険治療ではレジン修復は3,110円、3割負担で約1,000円。
根管治療は約9,000円、3割負担で約3,000円です。

どうして保険で最先端顕微鏡治療を行っている歯科医院から、わざわざ当院の自由診療顕微鏡治療を受診しにきたのでしょうか。

心当たりがあるとすれば、多分それはできるだけ本質を伝えたいという気持ちで説明や治療をしているからなのだと思っています。

保険治療が当たり前な歯科治療では、本質に触れると却って患者さんは混乱、困惑することがありますし、費用にばかり目を奪われると、もともと病気を治しに来ていたはずなのに目的が変わってしまうこともしばしばあります。

患部を拡大してみると、隣接面が虫歯になっているようです。

隣の歯には銀のインレーが装着されています。
インレー治療をするときは当然今回治療する歯の隣接面に近い場所をドリルで削るわけです。

ある研究報告ではおよそ7割の歯に誤切削を認め、誤切削された歯はそうでない歯と比較して約3倍虫歯になるといわれています。

今となってはこの歯が誤切削によるものなのかどうかはわかりません。

私がこのブログを通してミラーテクニックの大切さを主張しているのも、顕微鏡治療の本質だからだと考えているからです。

見ながら治療する、この当たり前のことがわかってない歯医者のなんと多いことか。

直視で顕微鏡治療します。という歯医者は、私から言わせてもらうと「私は手探りで治療します。」とホームページで宣言しているように見えてしまいます。

そこには誤切削などに対する配慮は無いのだと思います。
だって、見えない治療を堂々と宣言しているのだから。

入口部分を広げると虫歯は内部でかなり広がっていました。

隣接面の虫歯は発見が遅れがちで、場所柄お手入れが行き届きにくい場所なので気づいたときはかなり進行していることが多いです。

虫歯を取り除いていくと、窩洞はだんだん箱型になっていきます。

頬側・口蓋側・歯髄側・窩底部の4つの面に見逃しがないかどうか確認する必要があります。

う蝕検知液ではまだ広い範囲が染まっています。

口蓋側のう蝕除去。
セミナー受講生からよく質問を受けるのが右上の場合だと窩洞口蓋側をどうやって見るのか、です。

ミラーを少し動かすことで死角を攻略することができます。

エナメル象牙境も虫歯を取り残しやすい場所です。

北欧ではある程度虫歯が残存していてもきっちり充填して漏洩が無いようにすれば問題がないという報告もあります。

ある程度とはどれくらいなのか匙加減が難しそうです。
Ricucci先生の報告だと細菌に対して歯髄の反応はかなり鋭敏のようです。

虫歯をどこまで除去するのかは総合的な判断が必要です。

私は歯の状態、患者さんの希望、理解度、費用などから判断します。

ミラーテクニックは一度身につければ一生モノの技術です。

無意識に見たいところにミラーを移動し、死角があっても瞬時に対処できます。

隣在歯の誤切削の確認。

金属なので誤切削があればはっきりわかりますが、傷一つありません。
もちろん金属なので誤切削しても虫歯にはならないのですが、これが天然歯であれば話はかわります。

皆さん、こんな話を今まで歯医者さんから聞いたことありますか?

虫歯を取り除いたらレジンを充填します。
カリオロジーでは隣接面修復は高い適合精度を求めています。
どうしても隣接面歯肉側は不潔域になるため、適合の悪い修復物では虫歯の再発、歯周病の心配が出てきてしまいます。

適合の良いレジン修復を行うために私はラバーウェッジ法で治療します。

マトリックスの位置付け、適合状態で全てが決まります。

レジンを充填して硬化させた後で、どんなに器具で修正しても無理です。
全てはマトリックスの位置付けで決まります。

マトリックスが正確に位置付けられたらレジンを充填します。

辺縁隆線と咬合面はペーストレジンで賦形します。

硬化前に多方向から確認します。
ミラーテクニックだからこそ簡単にできることです。

硬化後、咬合調整と研磨を終えて適合状態を確認。

今回はあえて「本質」という言葉を使いましたが、歯科治療の本質を探し求める旅はまだ途中です。
現在自分が、これがレジン修復の本質だと考えている治療を紹介しました。

心でしか物事をよく見ることはできない。
大切なものは目には見えないんだよ。

『星の王子さま』の中でキツネが王子さまに言った言葉です。

歯の治療はとかく歯医者も患者さんもよく見えないものです。

歯の治療は、見えなければ話になりません。

あなた自身、このような治療の細部を見て心で物事を判断し洞察して下さい。

顕微鏡歯科治療を始めたばかりの歯科医師へ。
もしこのような治療に共感し、実践してみたくなったら是非プライベートセミナーを受講してみてください。

マンツーマンでミラーテクニックの勘所、コツをお伝えします。
プライベートセミナー

おもて歯科医院
歯学博士
日本顕微鏡歯科学会認定指導医
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医
表 茂稔